周囲のものが何も見えなくなってゆく。
いや、違う。
もともと何も見えてはいない。ここはただの白い空間。
白が黒に変わって行く。見えなくなって行くと思ったのはそのせい。
それがたまらなく恐ろしかった。
だから黒を拒んだ。
絶対的な黒であったが、なぜかそれを拒めた。
だから断固として拒んだ。
どれくらいの時が経ったであろうか・・・そんな事は分からない。まだ知らなかったから。
でも、黒が引いて行く。
よかった・・・黒があった場所には、白ではないけれど、何か別のものが居てくれた。
これが居てくれる限り、自分は大丈夫だと確信できた。
・・・
・・・・・・
アルスト「う、う〜ん・・・・」
目覚めは思いのほかよかった。
何か恐ろしい夢を見ていたような気もするが、嫌な夢を見た後の汗によるいやな感じもしない。
目呆けたまま周囲を見回すと、女が倒れているのが見えた。
アルスト「?!・・・サラか!?どうしたんだ!」
倒れているサラの肩を揺さぶと、けだるそうにまぶたを開けた。
アルスト「はぁ、無事のようだな」
サラ「?・・・・無事って?
ああ!アルスト!目が覚めたの?!」
アルストが倒れた事などを伝えるサラ。
アルスト「そう、いえばそうだったな・・・
くそ〜、この俺が自分の女の前で倒れてしまうとは!」
サラ「いつあんたの女になった!?
・・・まぁいいわ。調子も戻ったみたいだし。
体もなんとも無い?」
アルスト「この世界最強の男に愚問だな」
サラ「あっそ。じゃあ行きましょう」
サラはそういって部屋の扉へ歩く。後ろから追いかけるアルスト。
アルスト「?・・・また突然だな。
どこへ行くんだ?」
サラ「インペリアルシティ」
アルスト「おいおい!俺はそこのガードどもに狙われてるって言っただろ?!」
サラ「それ濡れ衣なんでしょ?いつか無実を証明するって言ってたじゃない。
これも人助けよ。手伝ってあげるわ。
それに・・・首都へ行けば仕事も見つかるかもしれないし」
アルスト「ま、まぁその、別に急ぎじゃないんだが、どうしてもというのなら仕方が無い。
それに、俺の夢のためにお前にどっか行かれると困るからな」
サラ「・・・?そういえば前にもそんな事言ってたわね。
夢って、どんな夢なの?」
アルスト「ふ・・・フハッハハハハ!
よくぞ聞いた!この俺の夢は、シロディールを乗っ取って肉奴隷王国にしてしまう事だ!
お前はその第1号とn」
ゴスッという音と共に、アルストは石畳を突き破り、いつものように地面にめり込んだ。
こうして2人はインペリアルシティへと向かうことになった。
そしてそれは彼らのシロディールを救う長い物語の始まりでもあった。