エール「わぁ…凄いね〜。
思わずヤッホーって言っちゃったよ」
サラ「うん…綺麗な景色…」
インペリアルシティを出てから4時間ほどの地点で、アルスト一行は休憩を取っていた。
アルスト「なぁ、こんな坂じゃ休み辛くないか?
もうちょっと平坦な場所で休もうぜ」
その提案にサラとエールの2人は後で行くと答えた。
アルスト「あんまり危ないとこまで行くなよ?」
そういうとアルストはスケレーdと共に少し離れた場所へと移動した。
アルストが居なくなると、サラは景色とエールを交互に見ながら話し出した。
サラ「ねぇエール?
あなたって記憶喪失なんでしょ?それでも名前だけは覚えてたんだ?」
サラの問いかけに首を横に振りながら答えるエール。
エール「ううん…名前も覚えてなかったよ。
でもね、レヤウィンのおじいちゃんが覚えててくれて…それで分かったの」
サラ「…レヤウィンに住んでたのね。でもどうしてスケレーdと一緒にインペリアルシティまで来てたの?
お父さんとお母さんは居なかったの?」
エールはサラの問いに舌足らずな言葉ではあったが、一生懸命答え始めた。
エール「え〜っとね…居なかったよ。
いままでの事みんなにも言ってあるからサラにも話すね。
私、気がついたときには森の中に居て…ここはドコなんだろうって歩いてたらオオカミに襲われて。
走って逃げてたら転んじゃって、もうダメだ〜って思ったらスケレーdのおじいちゃんが助けてくれたの。
それでね、一番近い町に送ってくれるっておじいちゃんが言ったから送ってもらったら…」
サラ「え!?おじいちゃんが言ったって…スケレーdが喋ったの!?」
エール「そだよ。
おじいちゃんが安全な町まで送ってやるって言ったから、送ってもらったの。
そしたらそこがレヤウィンで、私の事を知ってるおじいちゃんが居たの。
名前とかを教えてもらったんだけど、お父さんとお母さんはもう居ないって…魂を盗むお化けに殺されちゃったんだって…
それに私の家はもともと無かったんだって言われて…
どうしようって思ったらスケレーdのおじいちゃんが、ならワシの子供になればいいって、一緒に行こうって言ってくれたから、一緒に旅してたの」
サラ「信じ難い話ね…」(スケレーdが喋ったっていう所が…)
アルストとスケレーdはその話を少し離れたところで聞きながら休憩をしていた。
しばらくして2人の話が一段落したところで声をかける。
アルスト「そろそろ行くぞー」
そして4人はまた歩き出した。
向かうはKvatchの住民達が非難しているキャンプである。
どうやらそこに空に浮かぶ城へ入るための鍵のようなものを持っている人が居るらしいのだ。
日も落ちかけ、夕日が鮮やかになった頃、エールがアルストに言った。
エール「ねえお兄ちゃん。今どの辺?」
アルスト「スキングラード出てから結構歩いたからなぁ。
夜にはクヴァッチに着くだろう。…さては疲れたんだな?」
エール「ううん、後どれくらいかなーって思っただけ」
サラ「あっ!あれ!?」
サラが突然素っ頓狂な声を上げたので、アルストが振り向き見ると、彼女は何かを熱心に探していた。
アルスト「どうしたんだ?コンタクトでも落としたか?」
サラ「そんなのこの世界には無いわ!
スケレーdが居ないのよ!ようやく召還の時間が切れたの?」
アルスト「…一体何を言ってるんだお前は?」
エール「サラ…おじいちゃんに失礼だよ」
サラは2人の冷たい視線を浴びて、う…とうめいてバツの悪そうな顔をした。
アルスト「多分アレだ。
お前がぶっ壊した星を直しに行ったんだろう。今日の朝に頼んどいただろ?」
サラ(本気で言ってるの…?やっぱりアルストはあの時の衝撃で頭が…)
「で、でも簡単に直せるわけないでしょ?っていうかホラ…星になんて簡単には行けないわ」
アルスト「お前はスケレーd師匠を知らないからな。あんなもん師匠なら楽勝に直せるぞ。
それに直しに行ったんじゃないにせよ、心配は無用だ。
師匠はこの世で俺の次に強いからな」
エール「そうそう!おじいちゃんは強いんだよ!」
言ってエールは自分の視界の中に動くものを見つけた。
エール「…?
あっ…かわいい、何アレお尻振ってる〜」
アルストとサラが道を外れるエールを見ると、その先にライオンが居るのを見つけた。
猫科特有の獲物に飛びつく前の動作を…尻を振って力をためているようだ。
アルスト「ギャアアアアアア!何やってんだ離れろおおおおお!」
アルストが背の棒を抜き走り出すのと同時に、ライオンも一気に駆け出した。
え?と言って振り向いたエールはそれに気づかない。
間一髪間に合い、エールの横で棒を力いっぱい振り下ろす。
凄い勢いで飛び掛っていたライオンは予想外の打撃を受け、目標のすぐ横へと着地すると、体の方向を瞬時に変えて距離をとった。
そこへ一足遅れていたサラが到着し、ライオンと2人の間へ割ってはいる。
ライオンの方もどこからか現れたもう一匹と合流し、2匹で並び後ろ足で立ち上がってこちらを威嚇する。
アルスト「ライオンってこんな威嚇のしかたなのか?!
いや、そんな事よりも!
メスのライオンが2匹がかりで、俺の未来の肉奴隷を狩りの標的にしたのが許せん!
サラ!思い知らせてやれ!」
サラは剣を両手で構え、2匹のライオンから目を離さず言った。
サラ「わかってるわ!…分かってないところもあるけど。
エールをちゃんと見ててよ!」
アルスト「うむ。何が分からなかったんだ?
…まぁいいか。さて、エール。離れるぞ」
エール「大丈夫、私も戦う!」
腰につけていた棍棒を手に持ち、構えながら言った。
アルスト「お、おい待て!?お前みたいな子供がライオンに適うわけ無いだろ!?
SATSUGAIされるぞ!」
アルストは今にも飛び出しそうなエールの進路を棒で塞ぎながら言った。
エール「子供じゃないもん!
お兄ちゃんどいて、そいつ殺せない!」
後ろで勇ましく言ったエールが本当にライオンに走り出しそうな気がして、サラは急いで2匹のライオンへと走った。
腰の位置で右手を返し左手を剣の柄に乗せて構え、一気に距離を詰めて剣を横に振った。
自分のタイミングでの攻撃ではなかったせいか、一匹にカスっただけで致命打は与えられなかった。
だが、それでも十分な効果があったようだった。
傷を負った野生の獣は怖いと言うが、
この2匹のメスライオンはサラの攻撃を威嚇ととったらしく、こちらが子供を連れており、今逃げれば追撃の恐れが少ないとみたのか逃げ出してくれた。
戦いが終わると、アルストとサラはエールに危険だから戦いには参加しないように言い聞かせた。
最初は子ども扱いしないで、私も戦えるなどと聞かなかったエールであったが、
2人が自分の事を心配してくれていると悟ると、情けないような、申し訳ないような気持ちになってなるべく参加はしないと約束したのであった。
日も完全に落ちた頃、クヴァッチのキャンプ周辺へと辿り着いた。
アルスト「そういえば、スケレーd師匠と旅してたときは普通に戦ってたのか?」
アルストはエールを見ながら言った。
その問いに首を横に振り、否定の意を示しながらエールは答える。
エール「ううん。オオカミ以外のモンスターとは会った事無いよ」
アルスト「ああ、そう言う事か」
2人が話している間もサラはしきりに空を見渡している。
サラ「ね、ねぇ二人とも…」
アルスト「なんだ?」
エール「ん、何?」
サラ「あの星ってさ、割れてたよね?昨日」
そういって空を指す。2人もその先を見上げた。
エール「わー。昨日バコーンて割れてたのになおってる」
アルスト「俺は見てないからわからんが、あの大きいほうか?
流石師匠だな。完璧だ」
3人が見上げる空には、星が2つ並んでいた。
1つは昨日サラが破壊したと思われる星、もう一つは別の星であろう。
サラはアルストのスケレーdが直したというような言葉を無視して言った。
サラ「や、やっぱり夢じゃなかったのね…
でもよかった…きっと神様の誰かが直してくれたのね。
ホッとしたら何だか眠くなっちゃった。早くキャンプへ行きましょ」
そこへ上空から突然スケルトンが降ってきた。
スケレーdのようだ。
サラ「もう!二人ともいい加減目を覚ましなさいよ!
今アルストが空に召還したんでしょ!?」
アルスト「いい加減疑り深いなお前は。
師匠はこの世で俺の次に凄いんだって、理解しろよ」
サラ「あんたのが凄いのに何で師匠なの!?それも理解できないわ!」
アルスト「俺は師匠を超えた。つまりはそういうことだ」
そしてスケレーdの事でモメながらも、3人はキャンプへと辿り着いた。