サラ「スケレーd、どうしてあなたは喋る事ができるの?
  その…スケルトンなのに」

少し遠慮がちにサラが問いかけるとスケレーdはまた黙ってしまい、代わりにエールが答えた。

 エール「おじいちゃんは人間だよ?
  だっておじいちゃんが言ってたもん」

その言葉にサラは目を見開いて驚きの言葉を発し、スケレーdを見る。
すると彼は「本当の事だ」と言わんばかりにコクリと頷いた。

 スケレーd「驚くのも無理は無い。
  今はこんな体になっておるが、エールの言った通りワシは人間じゃった」

 

――そして、3人が話しているエールの部屋の前を誰かが通り過ぎようとしていた。

 アルスト(さて…今日は依頼もねぇらしいし、首都にでも行って来るかな)

そしてアルストがエールの部屋の前に差し掛かったときだった。
閉じられた扉の中から、サラの驚きの声が聞こえてきた。

アルストは何事かと思いと扉を開こうとしたが、スケレーdの声が聞こえたので手を止めた。

 アルスト(この声は…師匠?サラとも話せるようになったのか。
  しかしなぜエールの部屋で………ま、まさか!?
  そういう事なのか!?
  師匠がサラと話すためにエールに力を借りる → 話していたらいい感じに → 師匠が2人に告白 → だがあの2人は俺のもの、師匠を拒否
  そして師匠は断られた事に逆上して、力ずくで2人を自分のものにしようとするに違いない!
  エールの部屋に連れ込んだのも、最初からそのつもりだったからだな!?
  ヤバイぞ、サラとエールだけじゃ師匠にはとても敵わねぇ…!
  おのれぇぇぇ!
  いくら師匠と言えども、この俺の女に手を出す事は許さん!
  このまま俺が乱入して……!
  いや、待てよ…今阻止しに行っても事情を知らん2人は何の事か分からんはずだ。
  特にサラは危険だな。
  問答無用でぶん殴られる確立が180%ほどあるからなぁ。
  く…仕方ない…こうなったら師匠がキレて2人に襲い掛かるまで様子を見るしかないな)

こう思い扉に耳をつけ、スケレーd達の話を盗み聞きするのだった。

 

――そして、部屋の中では。

 サラ「ほ、本当なの?人間だったって…
  な、何で!?名前もスケレーdで、最初からスケルトンだったみたいなのに!
  呪いとかなの!?」

 スケレーd「いや、呪いではない…と、思うが…
  ………」

そういうとスケレーdは少しの間黙り、また話し始めた。

 スケレーd「うむ。
  今まで誰にも話した事は無かったが…いい機会じゃ。
  話そう。
  ワシが何者であったか。
  そしてアルストとの出会いも」

 エール「ヤッター!ついにおじいちゃんの謎が明かされるんだね!?」

 サラ「いいの?
  でも、あんまり無理はしないほうが…」

昔話が聞けると喜ぶエールとは対照的に、サラは心配そうにスケレーdの顔を覗き込んだ。
するとスケレーdは壁の方を向いて、サラ達を極力見ないようにしながら語り始めた。

 

 

…ワシはブルーマ出身のノルドじゃった。

 サラ「あれ?ちょっと待って…」 エール「おじいちゃんの人間だった姿が想像できないよ…」

気にするな。

ワシは若い頃に剣を極めるのだと決心し街を出て、A Samurai's Homeという家を見つけそこで一人暮らしておったのじゃ。

そしていつかは世界で一番の剣豪になるのだと、厳しい極寒の地で、血の滲む様な修行を積んでおった。

そしてワシが20になった年、家の近くでオオカミの群れに襲われておった女を助けた。

その女は、ジュリエットと名乗った。

美しい金髪の女で、家出をしてシロディールをさ迷い歩いておったという。

そしてその女は一晩だけ家に泊めてほしいと言ってきた。

怪我もしておるようじゃったし、この極寒の地で家出をして一文無しのジュリエットの頼みを断れるわけもなかった。

それからじゃ、ワシとジュリエットが一緒に住み始めたのは。

 エール「その時は女の人は大丈夫だったんだ?」

うむ。

そして…いつしか2人は愛し合うようになっていた。

それは幸福な生活じゃった。

裕福ではなく、それこそ本当にその日暮らしではあったが、ワシはジュリエットさえ居てくれればそれでいいと思い始めていた。

だが、ある日ふとワシは思ったのじゃ。

本当にそれでいいのか、と。

 サラ「どういう事?」

…ワシは元々剣を極めるために人との接触を絶ち、1人で剣の修行をしておったのじゃ。

じゃが、ジュリエットと一緒に生活していたら…確かに修行は続けておったが…剣を極めるのは無理なのではないか、と思ったのじゃ。

 サラ「そんな事はないわ」

……確かにその通りだったかもしれん…じゃが、若く愚かなワシはそう思ったのじゃ。

そしてワシはジュリエットに旅に出ると告げた。

彼女と一時離れるため…

じゃが、彼女はそれを拒否した。離れたくはない、と。

その時にはじめてジュリエットと喧嘩をしたほどじゃったな。

それでも結局のところ、彼女はついてくる事となった。

 サラ「私はそれでいいと思うわ」

うむ。ワシもジュリエットと話し合ううちに、そう思うようになっていた。

じゃが、結局それが間違いじゃったのかもしれん。

 サラ「え?何で?」 エール「間違いじゃないよ、一緒の方がいいよー」

…………

そしてワシらは修行の旅に出た。

今までより一層、自分に厳しく激しい修行を自らに課した。

しかしそれも長くは続かなんだ。

結局、ジュリエットと共に過ごす時間は、ワシにとって何よりも勝っていたのじゃろう。

そして、ある場所へと辿り着いた。

そこはSamurai'sHomeのある場所より遥かに過ごしやすそうで、静かで穏やかな時間が流れる場所じゃった。

そしてジュリエットがこう言った。

 「いつか…こんなところに住みたいな」

その時には修行の事など、どうでもよくなっていた。

ジュリエットともっと一緒に過ごしたい、彼女の願いは何でも叶えてやりたい。

ワシはそう思い、

 「家を建てよう、ここに。そして2人で住むんだ」

と、ワシは彼女と約束をした。

約束をし夢を語り合った次の日に、ワシらは帰る事にした。

共に働いて家を建てるだけの金を稼ごうと言う事になったのじゃ。

そして家への道中で、ワシらは…いや、ジュリエットは見つかってしまった…

 サラ「み、見つかったって…?」

 エール「あ!もしかして、家出してた家の人に?」

うむ。

それはジュリエットの父親じゃった。

その父親はジュリエットがワシと一緒に生活していた事に腹を立て、彼女を家に閉じ込めてしまった。

ワシはジュリエットとの仲を認めてもらおうと、何度もその家に足を運んだ。

じゃが、彼女の父は相当な権力者で、ついに会う事すら出来んかった。

一度、その家の庭に生えている木に登り、窓に向かって手を伸ばし、「ジュリエットオオォォ」と叫んだが、ガードに通報されて捕まってしまった事もある。

ガードに捕まる、通称「スタァーップ」じゃな。

そしてワシは…また旅に出た。

今度はもう家にも戻らんかった。

ただただジュリエットの事を忘れようと剣を磨いた。

剣が極まれば、いつしか彼女を忘れる事が出来るのだと信じて。

じゃが、結局ジュリエットの事は忘れられぬまま…

それから40年もの間…剣を磨きに磨きぬいてワシが60になった頃、ついには力尽きて屍となったのじゃ。

……

…………

…………いや、一旦終わりじゃが…

 

思いがけずに話が終わった事で、サラが驚きつつスケレーdに詰め寄って言った。

 サラ「ぇええ!?ちょ、ちょっと待って!
  ジュリエットさんは?!」

 スケレーd「…………わからん」

 エール「諦めちゃったの!?
  何で!?40年も思い続けてたのに!?」

エールの言葉を受けて、スケレーdは俯いた。

 スケレーd「……」

 サラ「こ、こんな…最悪だわ…完全なバッドエンドね…」

 エール「おじいちゃん!
  話を面白くするためには、もっとおじいちゃんが千切っては投げ千切っては投げとか!殺したらダメだから、素手とかで!
  ジュリエットさんをさらうとか!」

 サラ「そうよ!
  そんな権力者のクソオヤジぶっ飛ばしちゃえばいいんだわ!
  剣で!!」

 エール「えぇっ!
  サラ、それもバッドエンドっぽいよ…」

 サラ「あ、ご…ごめん、つい。
  ちょっと思うところがあったから…」

サラに詰め寄られ、赤くなるを通り越し、燃え盛るスケレーdの顔を見てエールが言った。

 エール「もしかして…おじいちゃんが女の人を苦手なのって…」

 スケレーd「…うむ。
  ジュリエットの事を忘れようと40年も剣を振り続けた反動、じゃと思うが」

 サラ「そんなのもうどうだっていいわ!
  ちょっと過去に行ってジュリエットさんを何とかしてきてよ!」

 スケレーd「いや、それは…流石のワシでも無理じゃ…」

 

山の部分も特に無しにあっけなく終わってしまった話に怒り心頭のサラとエールは、そのまましばらくの間スケレーdに文句を言い続けていた。
しかし、この話はこれで本当に終わりである。

そして次は、ついにアルストとスケレーdの話が語られる事になるのだった。

 サラ「何勝手に終わらせようとしてるの!
  こんなの絶対認めないわ!」

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