スケレーd「うむ…ではそろそろアルストとワシとの出会いの話を」

サラとエールの追及から逃れるため、スケレーdは半ば強引に話を始めようとしていた。

 サラ「うむ、じゃないわよー!
  アルストの話なんて興味ないわ!」

 エール「サ、サラ!
  それ以上近づくとおじいちゃんが燃え尽きちゃうよ!」

 サラ「もう火葬されてるっぽいから大丈夫よ!」

それでもスケレーdに食って掛かる彼女を止めようと、エールはその足にしがみついて叫んだ。

 エール「もしかしたら続きにジュリエットさんが出てくるかもしれないよ?
  ね、ね?サラ」

その言葉を聞いて、サラは「どうなの?」とでも言いたげな視線をスケレーdへ向けた。
するとスケレーdはその場から後ろへ飛びのいて、小さく頷くとまた壁を見つめながら語り始めた。

 

……そして、力尽き死んだはずのワシは、ある暗がりの街で目を覚ました。

いや、目を覚ましたと言うよりは、いつの間にかその場に立っておったのじゃ。

この、スケルトンの体になってな。

ワシは自分に何が起こったのかと自分の体を見回しておった。

その時、周囲から悲鳴が上がった。

それは当然の事だろうとワシは思った。街の中に突如としてスケルトンが現れたのじゃからな。

 エール「でも普通なら誰かが召還したと思うと思うよ?」

うむ。じゃが突然生き返った事でワシはそうは思わんかった。

そして街の人々は、そう思ったからこそ驚いておったのじゃ。

 サラ「誰かが召還したと思ったから驚いた?
  それは変よ」

うむ、人々が驚いた原因はワシを召還したと思った人物にあった。

ワシの側には、一人の年老いた女がおった。

その女を、街の人々はこう呼んだ。

魔女、と。

その魔女はしばらくポカンとワシを見つめ、「変わったスケルトンだねぇ」と言うと歩いてその場を立ち去ろうとした。

ワシは魔女に問いかけた「お前がワシを生き返らせたのか」と。

しかし魔女は首を横に振り、そのまま何も言わず怖がる人々に道開けさせながら去って行った。

 サラ「…歳をとりすぎてても平気なのね?女性は」

…うむ。

自分がどうなったのか分からんワシは、今度はワシが喋っている事に驚き騒いでいた街人の男に聞いた。

ここはどこなのか、さっきの魔女と呼ばれる老女は何なのかと。

男はワシを怖がっておったが、ワシが邪悪でないと分かると、街で起こった呪われた出来事にあの魔女が絡んでいると話してくれた。

 

事の始まりは、街の領主の妻が、子を身ごもった直後に事故死してしまったという事じゃった。

最愛の妻とその胎に宿ったばかりの自分の子を同時に失い、領主は悲しんだ。

その悲しみは深く、彼の心は闇で満たされた。

「この世の全てよ呪われよ」、闇に心奪われた彼はそう何度もわめき、禁断の魔術を行使せんとした。

そこに例の魔女が現れ、彼の魔術を半ばで破り、こう告げたという。

「まだ胎の子は死んでおりません。私が知る呪いの魔術ならば助ける事ができるでしょう」

その言葉で領主の闇は振り払われた。

自分の子に呪いをかける、その言葉が彼の良心を呼び覚ましたのじゃろう。

じゃが「残された時間は僅か」と付け足されると、彼は苦悶の表情を湛えながら止める家臣を振り払い、子を助けてくれと懇願した。

そしてその呪われた儀式は始まった。

魔女は死した領主の妻に、魔法の文様を描いた。

そして自分の血肉を与えたという。

死した者の肉体を生き永らえさせ、その胎の子を育たせるには、生きた者の血肉が必要だという事じゃ。

それから1ヶ月間、魔女は自らの血肉を与え続け、胎の子は魔術により十分に育った。

そしてつい先ほど、腐りかけ今にも肉体が崩れそうな母親からその子が生まれたらしい。

この街が暗がりなのは夜だからではなく、その呪われた子の仕業だと皆は言っておったな。

だが、それもあながち嘘とは言い切れんかった。

街の外の空は確かに晴れ渡っておったし、城からは何らかの妖気の様なものが立ち上っていたのじゃ。

男の話が終わると、ワシはすぐに城へと向かった。そこに、自分がスケルトンになった理由を求めて。

城の中には怪しげな霧が立ち込め、視界が悪く絶えず悪寒に見舞われた。

だが、なぜか奥へ行かなければならないと思い、悪寒を耐えながら歩いておると、悲鳴を聞きつけた。

悲鳴のするドアを開けると、まず異臭が鼻についた。

それは魔女の儀式を裏付けるかの如く、腐ったモノの臭いと強いアンモニアが混じったような臭いじゃった。

その強烈な臭いのする部屋の中には、赤ん坊を抱いた男とモンスターがおり、足元にはガード達が累々と横たわっておった。

赤ん坊を抱いた男を見て、ワシは男が気が狂ってしまっているのだと思った。

なぜならば、迫り来るモンスターに向かって赤ん坊を見せてやるように抱き上げて、優しげな声で話しかけていたからじゃ。

しかしモンスターは当然の如く、それを無視して男に襲いかかろうとした。

ワシはその殺気を感じ取ると、モンスターに向かって駆け出した。

途中、ガードの死体から武器を取り、そのまま勢いを殺さずに後ろからモンスターに切りつけた。

その時じゃ、ワシの剣『骸骨剣』が初めて完成したと思えたのは。

骸骨剣奥義の一つ、破裂骨切を受けたモンスターは破裂し粉々になり、聞く者の身を震わせるほどの断末魔が響き渡った。

じゃが、その時の断末魔はモンスターからではなく、赤ん坊を抱いた男から発せられたものじゃった。

涙とその他のもので顔をグシャグシャに汚し、バラバラになったモンスターの欠片を拾い集めるその狂った男を城から連れ出し、外で休ませておると暗雲が晴れ始めた。

太陽の光を覆う黒い雲が空に溶ける様に消えて行き、周りが明るくなるにつれ、男の狂気も晴れて行くようじゃった。

落ち着きを取り戻した男は、ワシを見て逃げ出そうとしたが、それを止めて事情を説明すると男も話し始めた。

男は、この街の領主である伯爵じゃった。

魔女の魔術は完成し、死した母から子は生まれた。

仕事を終えた魔女は、自分が去ったらすぐに魔術の施された母親の首を刎ね、その死体は燃やすようにと言ったそうじゃ。

しかしこの男、伯爵はその場では了承したが、結局そのような事はできんかった。

最愛の妻にこれ以上の傷をつけたくなかったのじゃろうな。

そしてシロディールの作法に則った葬儀を執り行おうと準備をしている最中、異変は起こった。

妻の死体が動き出したのじゃ。

それを聞きつけた伯爵は、先ほどの部屋に行き、魔女の言う通りにしなかった事を悔いた。

妻の体は、糸に吊るされた操り人形を振り回しているかのようにめちゃくちゃに動いていた。

ガード達も集まっていたが、その異様な光景に手も足も出す事が出来ず、震えて見ている事しかできんかったらしい。

そしてそれが一段落すると、その体が変貌を始めた。

皮膚は甲殻類のようになってゆき、手足は昆虫のようになった。

そしてその昆虫のような手足の先端からは、鎌のようなものが生え、それを振り回してガード達を次々に殺していった。

…ワシが倒したあのモンスターは、伯爵の妻だったのじゃ。

伯爵は話し終えると、また涙を流し、こう言った。

「この子は呪われてはいない、ただ魔女の血によって暗黒の力を得ただけだ。
 その力もDaedric Prince級の魂が無ければ、何も害は無いそうだ。
 だがこのような事態になってしまえば、街人はこの子を恐れ、もはや人とは認めはしないだろう。
 もはや、この子の為には殺してやる事しか道はない……」

そして伯爵は懐から短剣を取り出すと、泣きじゃくる赤ん坊にすまないすまないと何度も語りかけ、短剣を振り下ろした。

じゃがその手はワシが掴んで止めた。

「この子には何も罪は無い。
 おぬしでは育てられんと言うのならば、ワシが育てよう」

その言葉に伯爵は驚き、そして感謝の言葉を言った。

金はいくらでも援助するという、伯爵の言葉に対しワシはこう言った。

「金はいらん。
 その代わりに欲しいものがある」

「何でも言ってくれ、私に出来る事ならば何でもしよう」

「ではこの子に名前をくれ」

「それならば、もう決まっている。
 妻と一緒になった時にもう決めていたんだ。
 最初の子が男なら、『アルスト』だと」

そしてその日のうちに、人目を避けてワシとアルストはその街を離れたのじゃ。

 

 エール「ぇええ!じゃあ私も伯爵の子供ー!?」

アルストの事を兄だと思っているエールは驚きながら言った。

 スケレーd「いや」

 サラ「本当なの?その街って一体どこの街なの?」

 スケレーd「クヴァッチじゃ」

その言葉にサラは本当に驚いた。
もしもそれが本当ならば、アルストはクヴァッチの伯爵に会っている。

もはや死体となってはいたが。

 サラ「…もしかして、アルストがあの時に調子が悪くなったのってそのせい…?」

そうつぶやくとサラはスケレーdにクヴァッチでの出来事を話した。

 

 スケレーd「あやつはそれ以降クヴァッチへは行っておらんし、伯爵の名も顔も知らんはずだ。
  じゃが…不思議な繋がりで、その魂が親を分かっていたのかもしれんな」

そして3人はそのまま黙りこくり、静寂が部屋を包んだ。

 

しばらくして、何かを思い出したようにサラがその静寂を打ち破った。

 サラ「…アルストの事は、分かったわ。
  でも、スケレーdはなんでスケルトンになったの!?
  
ジュリエットさんの事だってまだ納得してないわよ!
  出てくるって聞いたら頷いたクセに出てこないじゃない!」

先ほどの雰囲気はどこへやら、サラはスケレーdに詰め寄って騒ぎ立て、スケレーdは逃げ惑う。

そしてエールは何だかよく分からないが、さっきの皆が押し黙った雰囲気よりこっちのがいいとはしゃぎ回った。

 

――そして、部屋の外。

3人が騒いでいる部屋の扉に耳をつけて盗み聞きしていたアルストは、盗み聞きをやめると何事も無かったかのように歩き出した。

 アルスト(師匠の野郎、俺が居るの知ってやがったな?
  何がいい機会だ。その程度の事、面と向かって言いやがれってんだ。
  …あのクヴァッチの城で死んでた奴が俺の本当の親か…
  ……
  違う、俺を殺そうとした奴なんか親じゃねぇだろ!
  あぁあああ!何かイラつくぜ!)

 

 

――――――――おまけ――――――――――――――――――――――――――――
この話はALUST.STORYとは関係の無いオマケのストーリーです。

 スケレーd「そ、そうじゃサラよ!
  ワシと幼少期のアルストを描いた『子連れ骸骨』という小説もあるぞ!」

スケレーdは近寄ってくるサラから逃げ回っていた。

 サラ「『子連れ骸骨』ですって!?」

 エール「そ、それってもしかして!
  ALUST.STORYの前にARUSTが1人で書いてたあの幻の小説の事!?」

 スケレーd「うむ。
  ARUSTが掲示板で大暴れしたせいで正栄拳道場・新館が移転せざるを得なくなる前に書かれていた小説じゃ」

 サラ「たった3話しか存在しない、書きかけの小説なんて興味ないわ!
  それよりジュリエットさんの話を訂正しなさいよ!」

ついに剣を構えてスケレーdに迫るサラ。
剣を高く持ち上げて踏み込むと、スケレーdへと力の限りに振り下ろした。

それまで逃げ回っていたスケレーdであったが、剣を持って迫るサラを前にした途端に逃げるのをやめ、その場に立ち尽くした。
そして剣はスケレーdの頭蓋骨へと勢いよく振り下ろされたが、当たる直前にピタリと止まった。

それはおかしな止まり方であった。頭蓋骨へ向かう剣は、減速することなくむしろ加速していたが、それでも止まったのだった。

 スケレーd「それはできん…
  その話は最初から決まっていた事なのだ」

スケレーdはサラの剣を骨だけになった指2本で挟み、止めていた。

剣はどんなに力を入れてもビクともしなかった、サラほどの力でも動かないほどの力を入れて剣を挟めば普通剣は折れるだろう。
だが剣にはヒビ一つ入っていない。
もはやこれは力ではなく、魔法か神の領域に達する業であるとしか思えなかった。

 エール「さすがおじいちゃんだね…!
  そうそう、私も今おじいちゃんに稽古してもらってるんだよ〜
  いつかサラより強くなっちゃうかもね」

2人が遊んでいるのだと思ったエールは横で気軽にそう言った。

だが、サラは完全に本気だった。
剣を外す事が出来ないとみると、もう一歩踏み出して剣をさらに前に進ませようと力を入れる。

 スケレーd「ぐあああぁぁぁ!
  ち、近い!近すぎるぞサラ!」

スケレーdは剣をねじ込む力ではなく、サラが近づいてきた事にダメージを受けた。

相手がひるんだ事を見逃さなかったサラは、そのままグイグイとスケレーdへ迫る。

そして…スケレーdは恥ずかしさのあまり気絶してしまった。ドサリと崩れ落ちる。

 サラ「勝った!勝ったわ!
  これでジュリエットさんの話は書き直しよね!?」

しかし、それはありえない事であった。

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