ゲートをくぐった先の世界は、今までの世界とは全くの別物であった。 

空は常に赤暗く、溶岩がまるで池か海の代わりにでもあるかのように所々に流れている。
塔は垂直に建っているが、その他の建造物は地形そのままに建てられているのか、
地形が歪むほどの事がよくあるのかは分からないが、傾いたりしているものもある。

 アルスト「う〜む・・・」

アルストは辺りを見回しながらなにやらうなっていた。

 アルスト「さっきの男、中に部下を送ったと言ってたけど、見当たらんな。
  ・・・まさか、これじゃないよなぁ・・・」

そこには槍に突き刺され、オブジェのようにされてしまっている人の頭があった。
それも一つや二つではない。もしかすると襲撃されたKvatchの民のものかもしれない。

 アルスト「まぁいいや。さっさと門を閉じる方法を調べるか。
 
 あの塔にでも入ればそれらしいものがあるだろうし」

杖を構えて一直線に走り出す。


 
 

 

 アルスト「く、くそ!剣さえあればこんな奴ら!
 
 うおっ!?後ろからも!?・・・こうなったら!」

敵の攻撃力が予想より高く、はじめてみるモンスターだったために何をしてくるのか分からないため、かなりの苦戦を強いられた。
このままでは不利とみたアルストは、次の瞬間すでに逃げ出していた。

 

途中、崖くずれにあい、地雷に引っかかったが何とか塔の門に到着する。

 アルスト「あ゙〜っ!なんて危ない世界だクソッタレが!」

と、悪態をつき扉を開けようと手を伸ばした瞬間。
バン!と扉が開き妙な鎧に身を包んだ人らしき生物が飛び出してきた。

アルストは驚きながらも後ろへ引いて距離をとろうとした。
だがその行動は逆にアルストを窮地へと追い込んでしまった。
人のようなその生物は弓を構えアルストに狙いを定め、そのまま矢を放ったのだ。

驚いてバックステップをしていたため、体勢を崩してしまい運良く矢が当たるのを避ける事が出来が、
体勢が崩れたのを見逃さなかった生物は、そこへ2の矢3の矢を放ってきた。

 

急いで横へ飛びのき、柱のような建造物へ何とか体を滑り込ませたアルストはホっと胸を撫で下ろした。

 アルスト(しっかしヤベェ・・・こんな杖じゃどうしようもないぞ)

自分が魔法の修行中だという事を忘れて、アルストは得意な接近戦にこだわってしまっていた。
ガシャンガシャンと足音が近づく。

 アルスト(おぉ?野郎近づいてきやがった。馬鹿だな。
  よし、もうちょっと・・・・もう少し・・・)

生物はさらに近づいてきて、アルストと謎の生物は建造物を挟み込むような位置関係になった。

こちらを探しているのか、建造物を迂回してさらに近づいてくる。

 アルスト(今だ!!)

建造物から生物が顔を見せたとたんに飛び出し、杖で生物の腹を思いっきり突いた。

獲物を追い詰めたと思い油断していた生物は反応が遅れ、杖をまともに受けた。
グォ、と低いうめき声を漏らして生物はドサリと崩れ落ちる。

 アルスト「ふぅ・・・にしてもこりゃ一体・・・?
 
 もしかしてDeadra?・・・いやDremoraかなぁ?」

杖でツンツンと突っつくと、う〜んと唸りだしたのでアルストは速攻で塔の中へと逃げ込んでいった。

 

塔の中も外と同じく異様な光景が広がっていた。

中央からは塔の最上階まで届くほどの火柱が噴き出しており、壁には異様な文様が彫られている。
だがそんなものには目もくれずにアルストは塔の最上階を目指して進んでいった。

途中壁から槍が突き出てくる罠があったが、既に敵が引っかかっていたために回避する事が出来た。

階段を上り、いくつもの扉を開けて、ようやく最上階の扉らしきものを発見した。

しかし・・・

 アルスト「・・・鍵がかかってやがる・・・」

どこか他の場所に扉があっただろうかと考え振り向くと、そこには鎧を着て大きなハンマーを持ったDremoraと、
ローブを着て同じく大きなハンマーを持ったDremoraがいつの間にやらアルストの後ろ、階段の下に忍び寄っていた。

 アルスト「うわあああぁぁ!」

鍵のかかった扉を背にしては分が悪いと、そのまま階段を飛び降りて逃げようとした。
しかし鎧を着た方が自分の後ろに着地したアルストを回し蹴りのように蹴り、転ばせた。

うつぶせに倒されたアルストはクルリと横に転がり仰向けになったが、既にハンマーを頭上に振りかざしている敵が目の前に居た。
後ろに転がりそのまま立ち上がると、ハンマーを振り下ろし隙の出来た目の前の敵に杖で殴りかかる。

しかしローブを着た方がその攻撃を受け止めて、力任せにアルストを押しのけた。

 アルスト「うわっ!
 
 いいコンビネーションじゃねぇ・・・っうおおぉ!?」

体勢を崩したまま喋っていたアルストに向け、鎧を着た方が一気に間合いを詰めてハンマーを横薙ぎに振りぬく。

大きく体をのけぞらせてその攻撃を避けると、アルストの目にローブを着た方がうつりこんだ。
いつの間に横に回りこんだのか、体をのけぞらせたアルストの頭めがけてハンマーを振り下ろそうとしている。

 アルスト「ぎゃあああああああぁぁぁっぁあああああ!!!!」

アルストは杖で地を強く突いて姿勢を戻した。その最中に頭頂部をハンマーがものすごい勢いでカスったような気がして、
足の先から指の先までツーンとするような嫌な感覚が走る。

よほど渾身の力を込めていたのか、ドズン!と大地を振るわせる音が響いた。瞬間、ローブを着ている方の動きが止った。

体の嫌な感覚を極力無視しし、動きの止まった隙をついて後ろにある扉へと滑り込み、塔の外へと逃げる事に成功した。

 

扉の先はとてつもなく高い所にかかる橋だった。

どうやらこの橋は塔と塔を結んでいるようだ。落ちたらひとたまりも無いだろう。

その塔を全速力で走るアルスト。後ろからは先ほどの2人が追ってくる。

 アルスト「く、くっそおおお!追ってくんなあああああ!
 
 ああああ!ちくしょうおおぉぉお、お?
 
 まてよ・・・落ちたらひとたまりも無いって事は・・・!」

走りながら何かを懐から出し、コロンコロンと捨ててさらに走る。
すると・・・

 鎧の方「ぬお!?」

と言う声を上げて前を走っていた鎧の方が転んだ。アルストが先ほど捨てたポーションの瓶で滑ったようだ。

後ろを走っていたローブの方は、とっさに鎧の方を避けようとして橋から足を踏み外して落ちていった。

 アルスト「ハッハッハハハハハハ!馬鹿め!
 
 かかったな!この俺の頭脳的作戦に!ははああああははははは!」

この笑いに逆上した鎧の方がもの凄い形相でアルストに詰め寄り、ハンマーを振り下ろした。
橋を揺らすほどの攻撃を後ろに下がって避け、アルストはニヤニヤしている。
そこへ追撃の横へ払う攻撃が襲う。

これを待ってましたと言わんばかりに敵の方へと体を進めながら屈んで避けて肉薄し、
ハンマーを振りぬいた方向へと敵の体を押した。

するとあっけなく敵はその方向へ体勢を崩して橋から落ちていった。

 アルスト「フアハハハハ!見たかDremoraども!
 
 貴様らなどこの俺にかかればこんなもんだ!」

アルストは本当に愉快そうにひとしきり笑うと、さきほど捨てたポーションを拾って隣の塔へと向かって歩き出した。

 

 

続く

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