謎のヒーロー2人は屋根の上から颯爽と飛び降り、ゴブリンマン3兄弟に向かって、おもむろにポーズを取り始めた。

ウルフウーマンは、道具袋からコップを取り出し、それを手の平に乗せてお茶を注ぎ始める。
驚くなかれ、その間、なんと0.128234秒である。もちろんその厳しい視線がゴブリンマン3兄弟から離れる事は全く無い。

そしてウルフマンはウルフウーマンの方向に少し横飛びするような格好で、左手をゴブリンマン3兄弟に差し出すようにして静止した。
そう、’静止’したのである。ちょっと浮かんでいるのである。
なぜ彼は浮かべるのか?その答えは読者諸君ならもう分かっているだろう。
その通り、なぜなら彼はヒーローだからだ。

・・・て言うか、この衣装ヒーローなのか?このポーズはなんなんだw
見て驚いたわwなんでお茶入れてるんだw正義のヒーローはどんな時でも優雅にお茶をすする余裕があるとでも言いたいのかw
相変わらずARUSTのセンスは理解できないw

 

 スパイダー・リン「ウルフマンと、ウルフウーマン!?」

スパイダー・リンは羨望の眼差しを彼らに向けながら言った。

 ウルフマン「フッ、流石はスパイダー・リン。我らの名を知っていたとは。
  正義のヒーローは何でもお見通し、そういう事だな?
  その通り!
  我らはウルフマンとウルフウーマン!
  2人揃って・・・!!」

ウルフマンはそう言ってウルフウーマンを見た。
だが見られたウルフウーマンは、困惑気味に小さい声で言った。

 ウルフウーマン「あ、あなた・・・!そんな打ち合わせはしていないわ」

するとウルフマンが取り繕うように言う。

 ウルフマン「ふ・・・2人、揃って・・・
  2人揃って!ウルフマンとウルフウーマン!!」

 ゴブリンマン「ウルフマンとウルフウーマン!
  またヒーローなのかゴブ!?」

ゴブリンマンの問いに答えるため、アンヴィル住民の一人が腕組みをして前にしゃしゃり出て説明口調で言った。

 住民「そう。彼らは30年くらい前に活躍した伝説のヒーローだ。
  当時ドレモラの・・・名前はなんだったか・・・そうだ、セィフュークという名の悪者が世界征服を目論んでいてな。
  このシロディールにもその魔の手が伸びていたんだ。

  セィフュークの手下達が毎日のように村や街を荒らしまわって、人々は心も体もボロボロだった。
  私はこう思ったよ・・・いや、世界中の人々がこう思っていたはずだ。
  『もうダメだ。世界はセィフュークに征服されて、この世界に生きるみんなは皆殺しにされるか奴隷にされてしまうんだ』と。

  しかしそんな時にこんな噂を耳にした。
  『ウルフマンと名乗る狼男とウルフウーマンと名乗る狼女がセィフュークの手下達を次々と倒している』と。

  大人たちは言った。『そんなものは嘘っぱちだ。この世にはヒーローなんて居ない。強い力を持った者はみんな悪者なんだ』と。
  子供の私でもそう思っていた。ピンチの時に助けてくれるヒーローなんて居るはずがないと。

  希望なんていだけないほど当時はひどかったんだ。

  そしてついにセィフュークの手下がこのアンヴィルを襲撃に来た。

  私は父親と母親に手を引かれ、燃える街から何とか逃げ出そうと走っていた。だが、途中で転んでしまったんだ。
  膝をすりむいて痛い痛いと泣く私に、セィフュークの手下が武器を振り上げて襲い掛かってくる!
  私は恐怖から叫んだ!『やっぱり誰も助けてくれない!この世に正義のヒーローなんて居ないんだ!』

  私が絶体絶命に陥ったその時!!

  アンヴィル中に彼らの、ウルフマンとウルフウーマンの声が響き渡ったんだ!

  彼らはこう言った!『希望を捨てるな少年よ!』『悪は栄えはしないわ!なぜなら、正義のヒーローはここに居るから!』
  彼らは・・・!」

ゴブリンマンが熱く語る男の言葉を遮って言った。

 ゴブリンマン兄「ちょ、ちょっといいゴブ?
  まだ続くゴブか?」

するとスパイダー・リンが大声を張り上げた。

 スパイダー・リン「今いいところなんです!邪魔しないで!」

 ゴブリンマン兄「はいゴブ・・・」

 スパイダー・リン「さ、続けてください」

 住民「彼らは本当に現れた!私がピンチの時に助けに来てくれたんだ!

  太陽を背にしてポーズをキメた彼らの姿は、私の知るどんな神よりも神々しく映った!

  そして私に迫ってきていたセィフュークの手下をたった一撃の下に倒してしまったんだ!
  あぁ、九大神よ!信じられるか!?ガードが束になっても敵わなかったあの手下を!一撃でだ!

  ウルフマンは転んだまま呆然としていた私に向かって立てるかと聞いた。私は、『うん』と答えた。
  そしてウルフマンはこう続けたんだ。
  『ならば自分の力で立ち上がるのだ少年よ。そして強くなれ。
   私たちは君たちを悪の魔の手から助ける事は出来るが、セィフュークに勝利するには君達の力も必要だ。
   立ち上がれ少年よ!シロディールの人々よ!そしてセィフュークを打ち倒そう!』と!

  それからシロディール中の人々は変わっていった!
  セィフュークにやられてばかりだった人々も、歯を食いしばりながら立ち上がり、武器を取って戦い始めたんだ!

  世界中の人々を敵に回したセィフュークは焦り、ついに自ら先頭に立って戦い始めた。

  血で血を洗うような激しい戦いの中でも、私たちは決して諦めなかった。彼らに、教えられたんだ。
  力の強い者が正義のヒーローではない、決して折れない強い心を持った者がヒーローなんだと。
  みんな彼らのようになりたかった。憧れていた。彼らこそがヒーローの手本だったから!
  だから戦った!どんなに苦しくても!彼らのようになれるのなら、そう信じて!

  そしてウルフマンとウルフウーマンがセィフュークを打ち倒し、私達がセィフュークの手下を倒して、ついに平和を取り戻したんだ!

  しかし、それから彼らは姿を消してしまった。

  セィフュークとの戦闘で重傷を負って死んでしまったとか・・・
  育児で忙しくてヒーローが出来ないとか・・・そんな噂が流れたが、私は信じていなかった。

  なぜならヒーローは絶対に死なないし、育児に追われてヒーローが出来ないなんて事があるはずが無い!
  今までずっとどこかで悪と戦っていた・・・そうだろう!?
  ウルフマン!ウルフウーマン!」

 ウルフウーマン「え?え〜・・・え、えぇ」

 ウルフマン「そ、そ、そ、その・・・その通り!
  ヒ、ヒーローは、育児に追われる事などない!!
  我々は・・・そう!
  あっちの方の遠くの辺りで・・・結構な悪っぽい奴らと、死闘的な事を繰り広げて、とてもヒーローだった!」

 住民「やはりそうだったか!
  あっちの辺でそんな死闘的な事があったなんて知らなかった!」

 

住民の長い話が終わるとゴブリンマン3兄弟が言った。

 ゴブリンマン兄「も、もういいゴブ?」

その問いにスパイダー・リンがにこやかに笑ってコクリと頷いた。

 ゴブリンマン「ウルフマンとウルフウーマン!
  お前達が増えたところで今さらどうにもならないゴブ!
  スパイダー・リンと一緒にジェットゴブリームアタックでやっつけてやるゴブ!」

ゴブリンマン3兄弟は一直線に並び、必殺技を繰り出そうと身構えた。

 スパイダー・リン「気をつけてウルフマンとウルフウーマン!
  あの必殺技に死角は・・・」

 ウルフウーマン「大丈夫よスパイダー・リン」

 ウルフマン「死角が無い技だと言うのなら、それを超えればいい。
  ゆくぞウーマン!愛と正義のウルフコンビネーションだ!
  スパイダー・リン、君も続け!」

ウルフコンビネーションとは、ウルフマンとウルフウーマンの必殺技である。
まるで長年連れ添った夫婦のように息の合ったそのコンビネーションは、30年前より遥かに強力であり、
その場のアドリブで繰り出される攻撃のバリエーションはまさに無限である。

 スパイダー・リン「でもそんないきなり!」

 ウルフマン「我々の家族あ・・・ヒーロー同士の友情パワーを信じて我々に続くんだ!
  奴らが来たぞ!」

ウルフマンとウルフウーマンは3兄弟に正面から突っ込んだ。
長話で回復したスパイダー・リンもそれに続く。

そしてウルフウーマンが一番最初に飛び出し、先頭を走るゴブリンマンへとジャンプキックを放つ。
これを待っていましたとばかりにゴブリンマンが盾を構えて攻撃を受け止めると、間髪入れずにその背後からもう一匹のゴブリンマンが飛び上がった。

しかし、飛び上がったのはウルフマンも同じだった。両者は空中で対峙する。

思いがけないところに敵が居て焦るゴブリンマンへ右拳の一撃を入れ殴り飛ばすと、その背後に居たもう一匹のゴブリンマンが姿を現した。攻撃直後で動けないウルフマンへと武器を振りかざして迫ってくる。

ウルフウーマンが飛び上がって伸びきっていたウルフマンの左足を掴んで力の限り引っ張り、彼を地面へと強制的に降ろす。
空中のゴブリンマンが振るった武器は、地上へと逃げて行く目標に到達する事ができず、虚しい風切り音を響かせた。

そしてウルフマンとウルフウーマンは空振りしたゴブリンマンへ向かって同時に飛び上がり、体を空中で回転させながら蹴りを放った。
その攻撃は全く同時に当たり、ゴブリンマンは天高く蹴り飛ばされた。

盾を構えたゴブリンマンは目の前で起こった出来事が信じられぬと言う風に空を見上げて呆然としていた。

そこへスパイダー・リンが迫る。

 スパイダー・リン「今だ!
  スパイダー・パーンチ!」

口を開けて空を見るゴブリンマンのアゴに、スパイダー・リンの必殺技「スパイダー・パンチ」が炸裂した。

必殺技を受けたゴブリンマンはアゴが外れたらしく、大口を開けたまま地面を転がって倒れた。他のゴブリンマンも同様に倒れて動かなくなっている。

 ゴブリンマン3兄弟「ま、参ったゴブ〜」

そして空中に飛び上がっていた2人が地面へ着地すると、スパイダー・リン、ウルフマン、ウルフウーマンの3人はポーズをキメてキメ台詞を叫んだ。

ガードや住民達は凄まじいコンビネーションに見とれてしばらく呆然としていたが、やがて拍手が起こり、アンヴィルの港区画は拍手喝采で満たされていくのだった。

 

 ガード「なんて強いんだ!」

 住民「あんた達が居ればもう何も怖くはない!
  ありがとう!正義のヒーロー達!」

3人のヒーローは人々の喝采に頷いて答えると、それぞれに街を去ろうとした。

しかし、そこへ人々の喝采の声を打ち消すような声が響いてきたのだった。

 ???「ゴブリンマン3兄弟を倒すなんて、なかなか強いじゃないか」

声の主は、いつの間にやらポーズを決めた3人の後ろで登場ポーズを決めていた。

それは、永遠への贈り物というブログの管理人様が作ったゼロの仮面を被り、

黒い衣装に身を包んだヒーローらしき謎の人物であった。

今回は打ち合わせ済みでしたw

inserted by FC2 system