今回は俯瞰視点ではなくアルスト視点ですので、誇張された表現があります。
ご注意ください。

 

俺(アルスト)達が資金調達の為に遺跡へ向かい、リンがアンヴィルへ行った次の日の朝。

 アルスト「みんなを集めろって言うから集めたのに、何やってるんだ?サラの奴」

話したい事があるからみんなを呼んでくれとサラに神妙な顔で頼まれ、その通りにみんなを食堂に集めたのだが、
彼女はなかなかやってこない。

 アルスト「そう言えば茂羅乃介も居ねえな」

 リン「もらのすけ?
  それってもしかして…昨日の夜からずっとサラさんの部屋の前に立ってたドレモラさんの事ですか?」

 アルスト「なんだ聞いてないのか?
  それじゃ驚いただろう。奴はサラのボディーガードで」

 ???「ちょっと待って!そこから先は私が話すわ!」

食堂の入り口辺りから待ったの声がかかり、そちらを振り向く。
すると何者かが茂羅乃介を従えて食堂へと入ってくるところであった。

 

食堂でサラを待っていた一同は、異様ないでたちの人物に驚いて後ずさった。

 アルスト(な、なんて立派なモヒカンだ…!あのレベルのモノはこの俺ですら見た事が無いぞ!
  それに奴が醸し出している雰囲気は間違いなく敵のもの…いや、モヒカンである時点で敵というのは一目瞭然だ!)
  「テメェ茂羅乃介!裏切ったな!」

そう思い、茂羅乃介を非難した。

 茂羅乃介「は?
  私は別に裏切ってはいませんが…?」

 ???「みんな何をそんなに慌ててるの?」

ゴツイ顔をした敵と思われる人物から発せられた声は女性のようであり、またその言葉も女性のようであった。

 アルスト(野郎、そっち系か!
  おネエ系ならこの俺に敵うとでも思ったらしいな!)
  「全員下がってろ!奴らは俺が始末する!」

目標はモヒカンの敵、背の棒に括り付けた縄をほどいて投げ捨てて棒を抜き放ち、それを両手に持って弾かれるように走り出した。

 アルスト(あの雰囲気からいって明らかに中ボスかなんかだ!
  でもそんなの関係ねぇ!一発で終わらせてやるぜ!)

自身のスピードで空気がバターのように感じるほどの空気抵抗を受けながらも、敵へ向かいテーブルを踏み台にして飛び掛る。
早すぎて視界が狭くなり、もはやモヒカンの敵しか見えない。
障害物は何も無い、このまま一気に倒してやる。

そして棒を振り上げたとき、狭くなった視界に何かが飛び込んできた。

反射的に、飛び込んできた何かに棒を振り下ろす。
反射的な攻撃だったとはいえスピードの乗ったその攻撃を、飛び込んできた何かは左腕だけで難なく防いだ。そしてしれっとこう言った。

 茂羅乃介「王よ、お気持ちは分かりますが落ち着いてください」

視界の中に突然飛び込んできた何かは、茂羅乃介であった。

 アルスト「お、俺の渾身の一撃をこうも簡単に!?
  …邪魔するな裏切り者!お前の始末は後だ!」

 エール「今の渾身の一撃だったんだ…普通に棒を振っただけじゃないんだ…」

後ろで見ていたエールには、先ほどの凄まじい攻撃が普通の攻撃に見えたようだ。

 茂羅乃介「お嬢様、いつもの鎧にお着替えになった方がよろしいのでは?皆様が混乱なされています」

と、モヒカンを振り返って茂羅乃輔が言った。

 アルスト(お嬢様だと!?女言葉のモヒカンオカマ野郎を!?コイツはソレ系だったかああああああ!)

 ???「なんで?大事な話のときぐらい可愛い衣装を着ていたいわ」

その言葉を聞いてある記憶が呼び起こされ、嫌な予感がよぎる。

 アルスト「…おい。お前、誰だ?」

 サラ「本当に分からないの?」

するとモヒカンは自分のアゴに手を当て、そのままアゴを持ち上げるようにして顔を取り外した。顔、正確には仮面のようだ。

 

仮面の下にあったのは間違いなくサラの顔であった。
サラは自慢げな表情をして、もう一度モヒカンの仮面を被ると自分が着る悪者っぽい鎧を見せ付けるように、その場でクルリと回って言った。

 サラ「どう?可愛いでしょ?」

その言葉は、確かな自身に満ち溢れていた。
そして
食堂でサラを待っていた一同は真っ白になってしまった。

 アルスト「そう言えば前にもこんな事が…」

サラに背を向け道具袋を漁り、例のモノを取り出して装備すると、向き直って言った。

 アルスト「サラ、どうだ?」

 サラ「な、何よ。私に対抗してオシャレしてどうするの」

これは以前クヴァッチで装備していた仮面だ。あの時にもサラはセンスがあるとか何とか言っていたが、まさか本気だったとは。

↓コレ

 アルスト「茂羅乃介。ドレモラってこういう美的感覚の持ち主なのか?」

 茂羅乃介「いいえ、違います。
  お嬢様はヘン…いえ、特別な感性の持ち主なのです。我々も同じと思ってもらっては困ります。
  お館様もお嬢様の特別な感性をどうにかしようと、
  こちらの世界に来る少し前にお嬢様の衣服を全て隠し、皆様の見慣れた鎧をお送りになったのです」

お館様とはサラの父親の事だ。

 アルスト「こっちに来る前はこんなのばっかり着てたのか!?
  あのクソオヤジ…グッジョブ」

 サラ「何がグッジョブよ!あのクソオヤジ、また性懲りも無くこっちの世界に来たら叩き斬ってやるわ!」

サラはその事を思い出したのか怒り心頭の様子だ。

 リン「まぁまぁ、落ち着いて」

 エール「サラってそれで家出したの?」

モヒカンの正体が分かり安心したのかエールとリンが前に出てきて言った。

 サラ「ち、違うわよ。そ、そ、そ、そんな事で家出なんてするワケないでしょう!?」

多分それは核心だろう。だが、今そんな事はどうだっていい。

 アルスト「サラ、いつもの鎧に着替えてこい」

 サラ「嫌よ!せっかくオシャレして来たのに!なんでアンタに命令されなきゃならないの!」

 アルスト「どこがオシャレだ!中ボスかと思ったぞ!
  エール、リン!
  どんな手を使っても構わん、サラを着替えさせろ!」

 リン「ど、どうやって!?」

 アルスト「工夫しろ!エールはこれを飲め!」

テーブルの上にあった酒をエールに投げてよこした。

 エール「いいの!?」

 アルスト「いいぞ。酔骨剣でサラを何とかしろ」

 サラ「ダメよ!朝からお酒なんてダメ人間のする事だわ!
  ちょ、ちょっとリンさん!脚にしがみつかないで!」

 

 

結局自分で部屋に戻って着替えてくると言ってサラは部屋に戻った。

そしていつもの鎧に着替え、せっかくオシャレしたのになどとぶつくさ言いながら食堂に戻って席に着くと、咳払いをして気を取り直し神妙な面持ちで話し始めた。
実は自分がドレモラの子である、ということを。

 リン「へ〜、そうだったんですか」

 エール「ヒック、しっっれら〜」

 アルスト「うむ。それがどうしたんだ?」

神妙な面持ちのサラとは裏腹に、みんなは淡白な感想を漏らした。

当然である。何せ彼女の後ろには純血のドレモラが控えているのだから。

そんな様子のみんなにサラはどうしたらいいか分からないようだった。

 サラ「え?…だから、その…
  お前ドレモラだったのかー、とか、騙してやがったなー、とか?」

何を言っているのだと首をかしげていると、いつものように食堂の入り口で立っていたスケレーdが言った。

 スケレーd「それで、お主の後ろにおる男はドレモラか?」

 サラ「そうだけど」

すると茂羅乃介は一歩前に出て一呼吸置いた後、言った。

 茂羅乃介「私の名は怒零・茂羅乃介(どれ・もらのすけ)。
  サラお嬢様の護衛としてこちらの世界に来ました。これからしばらくの間ご厄介になりますので、どうぞよろしくお願いします」

 スケレーd「うむ。
  ドレモラも人とそう変わらんようじゃな。
  いや、すまん。失礼な物言いじゃった。ワシはドレモラというモノをはじめて見たのでな」

 茂羅乃介「気にはなりません。私はオブリビオンでも人間のようだと言われていましたので。
  お館様の配下たち、つまりお嬢様の父君に仕える者たちは皆、通常のドレモラとは違うのです。どうしてかは分かりませんが」

スケレーdだけでなく、他の者達も茂羅乃介に興味があったらしく、次々と質問を投げかける。

そしてサラは…

 サラ「わ、私に質問とかは…」

 アルスト「特に無いな。
  もうお前の事はみんなよく知ってるだろ。
  いくらドレモラの子供だからって、茂羅乃介みたいな顔に変身できる、みたいな特技無いんだろ?」

 サラ「それはそうだけど…」

 リン「変身したらダメですか!?」

 エール「ど、どうしたの?変身しても別にダメってことないよ」

そしてそのまま茂羅乃介質問会議に発展した話し合いはどんどんと進んで行った。

 

 

 サラ「それじゃ、私たちはコロールに行ってくるから」

茂羅乃介質問会議が終わると、サラは茂羅乃介を連れてコロールへ行くと言い出した。

 アルスト「買い物か?」

 サラ「便利屋の仕事よ。コロールでネズミが大量発生して大変らしいわ。
  ね?スケレーd」

 スケレーd「うむ。あのご婦人はこの城へ来てもまだ恐怖で震えておった。
  急いだ方がいいだろう」

 アルスト「ネズミにか?
  にしても、そういう仕事は戦士ギルドだろ?
  アイツらめんどくさいからって俺達に回してないか?近頃こういうのばっかだ」

 サラ「いいわよ別に。お金もらえるし」

 アルスト「まぁそうかもしれんが、なんか納得いかねぇ…
  で、今回俺は行かなくていいんだな?」

 サラ「いいわよ。どうせアンタは戦闘じゃ役に立たないでしょ」

 アルスト「なんだと!?俺は最強だぞ!
  昨日もお前の親父をぶっ倒しただろ!」

 サラ「はいはい、嘘ね。ヴァルキナズになれるくらいだからクソオヤジは結構強いのよ。ムカツクけど」

そうでしょ?と茂羅乃介を見たサラ。

 茂羅乃介「はい。お館様はドレモラの中でも有数の強さを誇られています」

 サラ「ほら、やっぱりアンタ負けたんじゃない」

 アルスト「俺は負けてねぇ!
  いつか俺が最強だって分からせてやるからな!覚えてろよ!」

はいはい、HPだけは最強ね。などと適当に言いながらサラ達はコロールへと旅立って行った。

 

そのすぐ後、エールとリンも旅支度をして城から出てきた。どこかに行くようだ。

 リン「私たちはアンヴィルまで出かけてきます」

 エール「リンに新しい友達が出来たんだって。私も紹介してもらいにいくんだ〜」

 スケレーd「気をつけてな」

それをスケレーdと一緒に見送った。

 アルスト「暇んなったし、俺もどっか行ってくる。
  留守番よろしくな師匠」

 スケレーd「うむ」

そして正面の地上へ続くワープ装置のある塔まで歩き、中へ入ってワープ装置が放つ青白い光に触れた。

自身の体からも青白い小さな玉のような光が迸ったと思うと、もうそこは地上の遺跡の中であった。

そして遺跡の中から出て気がついた。

お金は全部サラに没収されていたんだ、と。

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