インペリアルと思われる若い女が息を弾ませながら階段を駆け上がっていた。
シロディールの物とは一風変わったデザインの鎧を纏い、大きく立派な剣を背中に背負っている。
壁の異様な文様から、オブリビオンの次元の建造物と思われる螺旋状の階段を1段飛ばしで駆け上がる。
目的の扉にたどり着くと、それまでの勢いそのままに扉を開けて中に入っていった。
中にはDremoraの戦士と思わしき人物が待ち構えていた。
Dremora「気づかれたようです。急いでこれの上に!」
Dremoraの戦士は、赤い光を放つ何らかの模様が描かれたタイルを指して言った。
女「ええ。これに乗れば行けるのね?」
Dremora「そうです。さぁ早く!」
女がタイルに乗ると、Dremoraはタイルから少しだけ離れた。
女「どこへ行くの?!あなたも来るのよ!」
Dremora「これは破壊しておかねばなりません。
さもなくばすぐにでも追っ手が・・・これを持っていってください」
Dremoraはそう言うと棒のようなものを女に差し出した。
女「そんなものどうでもいいから早く乗りなさい!」
Dremora「・・・・・・これを。」
Dremoraは女の声を無視して棒を押し付けた。
Dremora「その棒を持っていてください。」
女「これは・・・なんなの?」
Dremora「ただの棒です。何の変哲も無い・・ただの。
向こうへついたら捨てても、売ってもかまいません」
女「意味が分からないわ!
早く乗りなさい!追っ手が来たって別にいいから!」
その時、タイルが輝き辺りを赤く照らし、女はその光に包まれて見えなくなった。
しばらくして光がなくなると、女の姿はタイルの上から消え去っていた。
そしてアルストは・・・
塔と塔を繋ぐ橋を渡って隣の塔へと入っていた。
今度の塔は、吊るされ、ズタズタに切り裂かれた全裸の人の腐った死体が所々に吊るされているといった悪趣味な場所だった。
中心部は上から下までほとんどが吹き抜けになっており、塔の内部の側面を這うように螺旋状の階段が付けてある。
上を見れば人ぐらい入りそうなカゴが吊るしてあり、下を見ると一番下の床に所々穴が開いていた。
アルスト「うむ、上だな。下の床に乗ったら針が飛び出してきそうだし。」
螺旋階段を走って上る。
吊るしてるカゴにどんどんと近づいてきた。
カゴの中には人が入っている。まだ生きているようだ。
アルスト「おーい!そこの白髪でハゲたジイさん!」
ハゲジイさん「!!
お、おい早く逃げろ!ここにはまだ敵が居る!」
アルストはその言葉を聞いて杖を構えながら階段を上りきった。
そこにはDremoraが一人だけ居た。
今まで問答無用で襲ってきた者達と違いゆっくりとこちらに近づき、話しかけてきた。
と、Dremoraが言っている間にも、アルストは杖を野球のバッターのように構え、
敵が話し終わった直後に全力でスイングした。
一応武器を構えていたDremoraであったが、完全に不意をつかれまともに杖を受けて吹き飛び気絶した。
その光景をみたハゲた男はカゴの中で怯えている。
ハゲた男はメニエンというようだ。
メニエン「Nineにかけて!
君はなんと言う男だ!騎士道精神を持たないのか!?」
アルスト「じっちゃんの名にかけて!
戦いとは常に無情なものなのだ!油断した時には既に負けている!
よって俺の行為は王道なのだ!」
メニエン「じ、じっちゃん?・・・ま、まあいい・・・
とにかく君!もと来た道を戻って頂上の部屋に行ってくれ!
そこにはSigilStoneと呼ばれるものがある。それを取るんだ!
そうすればオブリビオンの門が閉じる!」
アルスト「でもなぁ、鍵がかかってて入れなかったんだよ。」
メニエン「その鍵ならそこに倒れている番人が持っている。
ほら、腰に袋を付けているだろう?それだ。」
アルスト「おお、これか!
よし、これで美女を助けられるぜ!じゃあな!」
鍵を見つけたアルストは全速力で戻っていった。
カゴの中に未だに捕らえられているメニエンは目をつぶり、真剣な表情で話し始める。
メニエン「私の事はほおっておけ!
それよりもはやく門を・・・・ん?あれ?どこいった!?
おおおぉぉぉーーい!もうちょっと助けようとかそういう事しないのか貴様あああああぁぁぁぁああ!」
そして塔はメニエンの悲痛な叫びで満たされていくのだった。
・・・
・・・・・・
アルストはもと来た道を戻り、鍵のついた扉を開けて部屋の中に入っていった。
ここも火柱が下から吹き上げている。その先に黒い玉のようなものが見えた。
アルスト「あれがSigilStoneか?
・・・どうやって取るんだよ、あんなの。」
ボーっとSigilStoneを眺めていると、後ろからゴオオという雄たけびが聞こえた。
振り返るとなぜかパンツ一丁のDremoraが、凄い勢いで拳を振り上げて殴りかかってくる。
アルスト「うぉぁ?!」
反射的にその攻撃を避けると、勢いあまってDremoraは下に落ちていった。
アルスト「な、な、何なんだアイツ?
変態なのか?Dremoraにも変態がいたのか?」
たとえ変態だったとしても、この高さから落ちたのでは助からないな、と思いSigilStoneへと歩いた。
近くで見るとそれはかなり危険そうな代物だった。
中心の黒いものがSigilStoneだろうが、その周りは炎のようなもので包まれている。
アルスト(ヤバイだろこれ。手で触っちゃだめだよなぁ・・・
あ、杖で突付いてあの火柱から外せば取れそうだな。)
そう考え杖を構えようとしたが、またも後ろに気配を感じ振り返ると、
そこには変わった鎧を着て大きな剣を背負った女がいつの間にか立っていた。
数秒無言で見詰め合う二人。
先に口を開いたのは女の方だった。
PM11:30、女は間違った挨拶をしてきた。
続く