オラグが天空の城へと来てから2週間。

便利屋にはネズミ退治の他、迷子のネコ探しや浮気調査の依頼がひっきりなしに来ていた。
もうこれは地域密着型の便利屋とも言えるファイターズギルドが仕事をサボり、ここに依頼を回しているとしか思えない状況だ。

厄介な事にシロディールの街々の住民にはそれがすでに定着しているらしく、酷い時にはおやつを買ってきてという依頼さえあった。
これには便利屋一同も驚きを隠せなかった。
天空の城まで来てそんな依頼をするのなら、その時間を使って自分で買った方が明らかに早いのだが、
依頼主の頭の中は常にお花畑で一杯のようで、どうしても買ってきて欲しいと譲らなかった。

だがそんな困った人までが依頼に来るという事は、便利屋の名がシロディール中に浸透したということなのだろう。

 

そんなこんなで便利屋の主力として忙しい日々を送るサラは、今日も天空の城を走り回っていた。

息を弾ませて玉座の奥の階段を駆け上がると、その先のアルストの部屋へと続くワープゲートに触れた。
自身の体から一瞬だけ青い光がほとばしり、すぐに景色が移り変わる。

部屋の中ではアルストとオラグがゲームをして遊んでいた。

 アルスト「ギャアアアアアア!やべぇ死ぬ死ぬー!」

 オラグ「衛生兵!衛生兵ー!」

衛生兵という単語からするに、どうやらミリタリー系のゲームのようだ。

 サラ「アルスト、オラグも。ちょっといい?」

サラの声に気づいた2人は、ゲームにポーズをかけながら振り向いた。

 アルストどうした?また人手が足りなくて俺も仕事をしなければならんのか?」

 サラ「今日はいいわ。2つあったけど、1つエールとリンさんに任せたから」

 アルスト「エールとリンって事は、またお使い系がきたのかよ」

 サラ「違うけど・・・まぁ似たようなものね。
  財布を家の中のどこかに置き忘れたから探すのを手伝って欲しい、らしいわ」

言ったサラの表情が少しだけムッとした。
依頼が来るのはいい事だと、どのような依頼も笑顔でこなしてきたサラであったが、この手の依頼は流石にもう嫌な様子だ。

 アルスト「そういうのは請けるのやめようぜ。
  じゃなきゃ際限が無くなっちまう・・・っていうかそういう奴ら何考えてんだ」

 サラ「知らない・・・でも依頼を拒否するのはダメよ。
  『どんな依頼もスパッと解決』、の説得力が無くなるわ!」

どこからともなく貼り紙を取り出し、一節を指差してサラが言った。

 アルスト「・・・」

 オラグ「・・・」

 サラ「・・・。
  そ、それでね。アルストはオラグと一緒に首都まで行って、オラグのお洋服を買ってきて」

 アルスト「お、お洋服だと?」

怪訝な顔をしてアルストが言った。

 オラグ「お、オラの?」

するとサラが爽やかに言い切った。

 サラ「ええ。いつまでもそんな服を着ていたら、あなたの魅力が半減でしょう?
  オラグは素材が最高なんだから、もっとオシャレしないと」

アルストとオラグが返答に困っていると、エールが勢いよく部屋に飛び込んできた。

 エール「お兄ちゃーん!お使い行くんならこれも買ってきて!」

飛び込んできたエールはそのままの勢いでアルストに駆け寄り、一枚の紙切れを渡した。

 アルスト「ん、なんだ?・・・氷の杖?
  何に使うんだ?」

 エール「アイス作るの!
  私もう行かないと、じゃあよろしくー!」

アルストが待てをかけるが、エールは素早くゲートをくぐってどこかへと走り去った。

 オラグ「す、素早いだすな」

 アルスト「氷の杖ってブルーマだよな。
  首都行ってブルーマ行ってたら2〜3日は確実にかかるぞ」

 サラ「そうね・・・茂羅乃介を行かせよっか?
  今日の依頼は私一人で十分だし」

エールの突然の頼み事は茂羅乃介に任せると決めかけたところで、突然部屋の中に黒い影が現れた。
3人はまた幽霊だろうと思ったが、目を凝らして見ると、それはスケレーdであった。

 アルスト「幽霊かと思ったら師匠か」

 スケレーd「うむ。
  その買い物、ワシが引き受けよう」

 オラグ「また突然だすな」

 サラ「引き受けてくれるのはいいんだけど・・・
  その、言いにくいけど、スケレーd一人で行ったらモンスターだと思われて売ってくれないかもしれないわよ?」

 オラグ「今気付いただすが・・・それは茂羅乃介も同じだと思うだす」

 スケレーd「いや、ブルーマに限ってその心配はいらん。
  この姿になってからも、アルストと共に2年ほどブルーマに住んでおった事があるんじゃ。
  あの街の住民はワシの事を知っておる」

 

それならスケレーdに頼もうと言う事になり、幽霊と茂羅乃介を除いた天空の城の住民は、それぞれに出かけていった。

スケレーdは久々に古巣のブルーマへ行く事になり、足取りも軽く厳しい寒さの街へと旅立つ。

骨だけになった身は、すでに寒さも暑さも忘れているが、
目的地に近づくにつれ、懐かしい景色に当時の寒さを思い出しカタカタと骨を鳴らして一度身震いした。

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