スケレーdがブルーマに旅立った日、アルストとオラグは首都インペリアルシティまで服を買いに来ていた。
オラグ「オラここで待ってるから、アルストだけで買いに行ってほしいだす」
今までワケも無く人々から忌み嫌われていたオラグは、やはり人の沢山居る首都には入りたくないようであった。
アルスト「何言ってんだ。
お前はただでさえデカいんだから一緒に来なくちゃ寸法が分からんだろ」
なんだかんだと言いながらも、門をくぐろうと門番の前を通り過ぎようとすると門番がアルスト達を制止した。
門番「待て!」
アルスト「なんだよ?」
門番「貴様ではない。
そっちのお前!お前はorogだな?orogは首都には入れん、今すぐにどこかへ行け!」
やはりこの首都でもorogは嫌われているようだった。
オラグは震えて一歩二歩と後ずさりし、アルストが門番に食って掛かる。
アルスト「なんだとテメェ!この俺の雑用係に文句があるってのか!?」
怒りの形相で詰め寄るアルストに負けじと門番も声を張り上げる。
門番「当たり前だ!貴様分かっているのか?あのorogだぞ!?
野蛮な奴らを首都に入れて何か問題を起こされたら、ここを通した私の責任になってしまう!そんな事はまっぴら御免だ!
分かったらさっさとどこかへ行け!orogの仲間だというのなら貴様もだ!」
アルスト「んだとこのクソ門番が!俺の雑用係って事はテメェなんかよりずっと立場が上に決まってんだろうが!
分かったらさっさとそこをどけクソが!ぶっ殺すぞ!」
今にも掴み合いになりそうな二人を見てオラグが右往左往していると、首都から普通のインペリアルガードより上等な鎧を着た男が出てきて二人を一喝した。
その男は以前アルストを泥棒と間違えてクヴァッチまで追ってきた、アルスト曰くカイム・アラゴナーだった。
カイム「スタァァァァアップ!こんなところで何をもめているんだ!」
アルスト「なんだテメ・・・あ、カイム。
おいカイム!このクソ門番をクビにしろ!これは命令だ!」
門番「何様のつもりだ!?隊長に命令とは失礼な奴め!」
アルストに気付いたカイムは一瞬驚いてから引きつった笑顔で応対した。
カイム「き、貴様は・・・!い、いや。
鉄拳のサ・・・美しい武闘家サラ様と一緒におられたお方でしたな。
サラ様はお元気でいらっしゃいますか?」
カイムはこの間サラが星の一つを割った事を覚えており、まだサラのことを恐れているようだ。
アルスト「・・・いきなり何言ってんだお前?美しい武闘家?サラはどっちかというと剣士だぞ。
って、そんな事はどうでもいい!この門番が俺の雑用係を街に入れねぇとか言ってやがるんだ!
こいつを死刑にしろ!」
死刑にしろ、とメチャクチャな事を言われ眉を吊り上げたカイムであったが、
カイム(ここでこの男を怒らせたら、また鉄拳のサラを連れてきて街で一緒に暴れはじめるかもしれん・・・)
こう思ってすぐに作り笑いをしてアルストが指したオラグの方を見た。
カイム(・・・・!!!
オークの大男だと思ったがよく見ればコイツはorog!?
クソ!何て事だ!鉄拳のサラの仲間は厄介な奴ばかりだ!)
「そ、それは失礼を。・・・ほら、お通しするんだ」
カイムは作り笑顔を崩さぬようにしながら門番をアルストから遠ざけ、門を開いて二人を中に入れた。
アルスト「そいつは死刑にしろ!分かったな!」
捨て台詞を残してアルストは門をくぐり、オラグもチラチラとガード達を見やりながらアルストの後ろを着いていった。
門番「隊長・・・いいのですか?」
門番の問いにカイムは答えなかった。
二人の姿が見えなくなると、カイムが門番に言った。
カイム「・・・奴らは、鉄拳のサラの仲間だ」
門番「っ鉄拳の!?前に星を割ったあの破壊のプリンセスですか!?」
カイム「そうだ・・・私はこれから元老院に行って報告をし、インペリアルの全ガードの指揮権を一時的に貰う。
奴らと対峙した事があるのは私だけだ。私がやるしかない・・・
君は2〜3人連れだって私が到着するまでの間、奴らが問題を起こさないよう見張っていてくれ」
門番「そ、そんな。私にはとても・・・ここの門番もありますし・・・」
門番は自分の力量を遥かに超えた大役を任され、緊張に震える声で言った。
カイム「馬鹿者!門番などどうでもいい!
今この首都には五千万の敵軍より危険な者達が入り込んでいるのだぞ!」
カイムに叱咤された門番は、うろたえながら駆け足で首都の中へと消えて行った。
オラグ「アルスト、オラ・・・やっぱりもう帰りたいだすよ」
街に入って店を探していると、オラグが弱音を吐き始めた。
先ほどの門番とのやり取りで怖くなってしまったようだ。
アルスト「今さら何言ってんだ。
お前はデカくてハッタリが効くんだからもっとどっしりと構えてろ。
・・・よし。
おい、オラグ。前から歩いてくるあの男を横の路地に連れ込め」
オラグ「な、なぜだすか!?」
アルスト「お前に根性を付けさせるためだ。いいからやれ。
その後カツアゲしろ」
オラグ「絶対に嫌だす!」
その後ろでアルスト達の様子を伺っていた先ほどの門番と、もう一人のガードが小声で話し合いを始めた。
門番「おい聞いたか・・・?
いきなり何の前触れも無く犯罪を犯す気だ・・・どするんだ」
ガード「・・・決まってるだろ。何とかしてあの罪の無い住民を犯罪の魔の手から救うんだ。
それも奴らに感づかれないように、自然に」
門番とガードは頷き会うと、前方へ向かってダッシュした。
アルストとオラグのわきをすり抜けて、男へと一直線に走る。そして・・・
門番&ガード「スタアアアァァァァアァッップ!
貴様!なにか・・・・大変な罪を、犯した気配をまとっているな!?
何て酷い事をするんだこの罪人め!言い訳はあちらで聞く!こっちへこい!」
門番とガードはただ歩いていただけの男を両側から挟み、持ち上げて、その場から走り去る。
持ち上げられた男はわけも分からずうろたえるだけだった。
彼らはガードの仕事をしているフリをしながら男をカツアゲの危機から救おうとしたらしい。
切羽詰っていたせいか、そのやり方はとても過激であったが・・・
アルスト達に見えない場所まで来ると男を降ろし、間違いだったと告げるとすぐにまた尾行を再開した。
目の前で突然の逮捕劇を見てしまったアルストとオラグはしばらく呆然としていたが、気を取り直して目的の店へと歩を進める。
しばらく行くと、またも前方に男が歩いているのを見つけた。
アルスト「さっきはターゲットがいきなりスタップされたが、今度は大丈夫だな」
オラグ「カツアゲはしないだすよ」
アルスト「俺がそんなワンパターンな人間だと思ってるのか!?
今度は喧嘩を売ってこい!
それかいきなりぶん殴れ!お前の根性を見せてみろ!」
オラグ「意味が分からんだす!」
その二人の様子を伺う門番達。
門番「ま、またやらかす気だぞ」
ガード「畜生、今度は殺人かよ」
何も知らずにアルスト達の前を通り過ぎようと歩く男に向かって、ガードが勢いよく迫り来る。そして・・・
ガード「スタアアアアアアアップ!」
先ほどの男より遥かに勢いよく転がって行く罪も無い住民の男。その男に向かって門番が叫ぶ。
門番「そこまでだ!犯罪予備軍のクソ野郎め!
貴様のあくどい企みは全部バレているぞ!観念してこちらへこい!」
オラグ「アルスト」
アルスト「なんだ」
オラグ「首都ってやっぱり物騒なところだすな。
行く人行く人がスターップされてるだす」
アルスト「いつもはこんなにスタップされてないと思う。今日が特別なんだろ」