そして時間は第48話で、アルストとスケレーdが話した後へ――。
夕食の支度を終えたエールがスケレーdを見つけて駆け寄った。
エール「おじいちゃんおかえり。氷の杖は?」
アルスト「どっかに忘れてきたらしいぞ」
エール「えー・・・」
残念がるエール。
スケレーd「す、すまん。
今から取りに行って来よう。向こうで頼まれた仕事も片付けたい」
エール「明日でいいよ〜。もうご飯になるし」
スケレーd「そういうわけにもいかん」
そう言ってスケレーdは早速天空の城を出て、ジュリエットの墓がある家へと向かった。
夕食が終わり、皆が食堂で寛いでいる時にスケレーdは帰ってきた。
手には氷の杖を持っている。
その場に居た全員が「おかりと」口にし、スケレーdは恥ずかしそうに「ただいま」と答えた。
エール「それが氷の杖?」
既に興味津々といったようにエールはスケレーdから氷の杖を貰ってためつすがめつ眺めた。
リン「振ると氷が出るんですか?」
茂羅乃介「正確には冷気です。水に向かって振れば氷も出来るでしょう」
さすがにサラの教育係を勤めていただけあって、茂羅乃介はこういうアイテムに詳しいようだ。
正確には武器である氷の杖を、危なっかしくも振り回すエールに使い方を教えている。
アルスト「あれ?アイツ剣買ったのか」
茂羅乃介の腰にロングソードを見つけたアルストの問いに、
サラ「あんたが折っちゃったから私が買ってあげたの」
椅子に座り、コップを片手に持ったサラが答える。
アルスト「俺にも買ってくれ。もう棒は飽きた」
サラ「ダメよ。あんたすぐ折っちゃうでしょ。
それに魔法使いは剣を使わなくていいの」
アルスト「明らかに俺は伝説の剣士だろ。なんで魔法使いって事になってるんだ」
リラックスした雰囲気の流れる食堂。
その中から場違いな奇声が突如として上がる。
???「お前らヨー!
この伝説の魔剣様に挨拶も無しでスルーとはいい度胸ダナー!!」
その声は耳に響くというものではなく、スケレーdの声のように頭に直接響いた。
スケレーd「これ、いきなり叫ぶでない」
シンと静まり返った中で、スケレーdが背に背負った魔剣ストームプリンガーに話しかける。
ストームプリンガー「だって誰も俺に気付かないんだゼ?
こいつら全員マジ力0なんじゃネーノ?」
そういえばスケレーdが変な剣を装備していると、ようやく全員がスケレーdの剣に気づいた。
オラグ「ブバーッ!!!!・・・ヒィィ!!
また呪われた装備だす!」
勝手に動き回る鎧に付き纏われた恐怖が蘇ったのか、オラグが飲んでいたお茶を盛大に噴き出し体に似合わぬ高い声で悲鳴を上げた。
その鎧は現在オラグの部屋に飾られている。
オラグの部屋に着くまでずっと彼に付き纏って来ていたが、不思議な事に部屋の中に置いておくとついて来ないのだ。
サラ「もー!オラグ!いきなりお茶吹かないでよ、かかったでしょ」
オラグにお茶をかけられてビショビショになったサラがオラグを叱った。
アルスト「師匠、その変な剣はなんだ?マジで喋ってるのか?」
ストームプリンガー「この魔剣ストームプリンガー様に向かって変な剣とはなんダ!?
マジ力最低レベルで変な魂のクセしやがっテ!」
アルスト「んだとクソ剣が!」
スケレーd「やめんか」
このままでは喧嘩になる。スケレーdはそう思い、少し強めに2人・・・いや、1人と1振をなだめた。
さすがのアルストも育ての親であるスケレーdには逆らえず、魔剣も所持者に逆らうわけにもいかなかった。
1人と1振が黙ると、スケレーdは青い鞘の剣を取り出してアルストに差し出した。
スケレーd「アルスト、この剣をやろう。この魔剣ストームプリンガーと一緒に貰った物じゃ。
なんでも絶対に折れぬ剣らしい。お主の技にも耐えてくれるじゃろう」
アルスト「折れない剣?師匠の割には気がきくな。
丁度近頃の剣は折れやすくて困ってたとこだ。サンキュー」
差し出された剣を受け取り、今まで装備していた棒を捨てて装備するアルスト。
そんなアルストを遠い目で見つめ、オラグにかけられたお茶を手ぬぐいでふき取りながらサラが言った。
サラ「どうせ絶対に折れない剣でもすぐに折っちゃうんでしょ・・・」
どんどん話が変わっていくため、自分を無視するなと耐えられなくなった魔剣ストームプリンガーがまたしても叫んだ。
ストームプリンガー「お前ら俺は喋る魔剣だゾ!?その辺なんか言う事ネーノ!?」
悲しいかな便利屋一同は、このような不思議な存在に対してもう慣れきってしまっていた。
そしてストームプリンガーを交えて、天空の城はまたしても賑わいを取り戻し、夜は更けていった。
皆が寝静まった頃、サラも自分の部屋に戻って眠った。
ふと、何かの気配を感じて目を覚ます。
サラ「!?・・・誰!?」
急いで明かりをつけると、入り口の辺りに全く知らない人物が立っていた。
???「悪名高き『鉄拳のサラ』も、のんきに眠る事があるのだな」
ルシエン・ラカンスと名乗る全身黒ずくめの男は、この異常な事態も自分にとっては当然の事と言った風に平然と言った。