ポツリポツリと、首筋に冷たい水滴が当たった。
リンは肩をビクリと緊張させて空を見上げる。
リン(さっきまで晴れてたのに)
いつの間に時間が経ってしまったのだろうか、と街全体を見渡した。
テツヲが崖に飛び込んだ後、リンはもう一度スパイダー・リンに変身して安全に山を降り、テツヲが落ちたと思われる場所を探索した。
何時間も何時間も。
だが何も見つかりはしなかった。
蜘蛛悟郎が何度もリンを説得し、ようやく彼女はその場から離れた。そして
そして何かにとりつかれた様に急いでアンヴィルへと戻り、今に至る。
リン(テツヲ君はどこにも居なかった。
だから絶対に生きていて、アンヴィルに戻ってくるはず)
リンはどんな事があっても、あの事実を受け入れようとはしなかった。
雨が、強くなってきた。
冷たく降る雨に打たれても、リンはその場に座り込んで動かない。
その場所は、いつもテツヲが座っていて、門から街に入ってくるリンを迎えていた場所だった。
リン(今日ぐらい私が待っていてもいいよね・・・)
雨はどんどんと強くなり、雷が鳴った。
リンはその場でずっと待つ気だった。
テツヲがあの門から姿を現すまで、ずっと。
心のどこかではあの事実を冷静に見ていた。
だが、それを理解する前に彼女の心は違う考えにすがりつく。
リン(そんな事あるはずない。だって少し前まで一緒に居た。
いきなりどこにも居なくなっちゃうなんて事、あるはずない。
すぐに帰ってくる、すぐに)
リンはテツヲの事が好きだった。
それはまだ愛と呼べるものではなかったのかもしれないが、それでも彼女は信じていた。
リン(クマンやゴブリンマンにアンヴィルを襲わせようとしたのだって、テツヲ君が迷ってた証。
テツヲ君が悪くない。絶対。
本当はとても優しいんだから。話せばすぐ分かってくれるんだから。
早く帰って来て)
頬を伝う冷たい水に混じり、温かい水も流れている事だけは分かっていた。
それから後、アルストとエールがリンを探しにやってきた。
どれだけ雨に打たれていたのであろうか、リンの体は冷え切って氷のように冷たく、それでも身じろぎする事も無く門を眺め続けていた。
迎えが来てもまだリンは帰ろうとはしなかったが、何も言わない彼女に業を煮やしたアルストが彼女を抱き上げた。
するとリンの体から力が抜けて、そのまま気絶するかのように深い眠りの中へと落ちていった。
――――次回予告――――
アルスト「と言うわけで、俺が次回予告をやる事になったのだ。
ようやく正体を現したスパイダー・リン!なんとその正体は俺のリンだった!
だがタランチュラ・テツヲが死んだせいでなぜか落ち込み、何かをする気力も無くしてしまう。
そんな失意の真っ只中、耳に飛び込んで来るのは一般市民の悲鳴!
失意のリンは、また正義の味方として活躍する事が出来るのか!?
それともこのまま終わってしまうのか!
次回!!」
リン「変身蜘蛛美少女!!!」
アルスト「スパイダー・リン!!!!!
って、なんでそこだけ入ってくるんだ?」
リン「・・・・」
アルスト(コ、コイツ・・・確実に自分の編のタイトルを『変身蜘蛛美少女スパイダー・リン』にしようとしてやがる。
本当は『変身蜘蛛女スパイダー・リン』なのに、それがそんなに嫌なのか・・・?)
アルスト「次回!!」
リン「変身蜘蛛美少女!!!!」
アルスト「・・・・スパイダー・リン」
アルスト(やっぱりかぶせてきやがった。めんどくせぇからもういいか)
アルスト「次回!!」
リン「変身蜘蛛美少女!!!!!」
アルスト「スパイダー・リン!!最終回!!
『シロディールヒーローズ』!!
お楽しみに!」