エールは暇をもてあましていた。
今日はリンと幽霊以外、みんな仕事で出払っていたのだ。

こういう日にはどこかへ出かけるわけにもいかないので、リンと一緒になにかしらして遊ぶのがいつもの習慣であるが、
当のリンが部屋に閉じこもってしまって出てこない。
話しかけても帰ってくるのは生返事、落ち込む姿も痛々しくて近寄るのも憚られた。

まだ時間があるというのに昼食の下準備まで終わらせてしまったエールは、ついにやる事が無くなり、広間にある玉座に座って王様ゴッコをしはじめる。
偉そうに見えるようにしてどっしりと玉座に座り、装備していた棍棒を杖のように持つ。
手の平で杖を支えながら、エールは思った。

 エール(つまんない…手下の人が「大変です!」とか言って入って着たり、
  ジイが「陛下、ついに隣国が我らが手中に入りましたなふっふっふ」とか言ってくれないと……)

どうやら、エールが想定している王様は戦時中の王様のようだ。

短くため息をついて立ち上がろうとすると、天空の城の大きな門が重々しい音を響かせてゆっくりと開かれた。
誰かが帰ってきたのだと思ったエールは、王様ゴッコに付き合ってもらおうとし、また偉そうに座って目を閉じた。

 

 

 

 

首都インペリアルシティでガード隊長を務めるカイム・アラゴナー(アルスト曰く)は、
肩を怒らせ足音を響かせながらスキングラードの兵舎の中を歩いていた。

 カイム(なぜ私が遺跡の探索など)

王が暗殺されたこのシロディールで、今や一番の発言力と影響力を持つのは元老院。
その元老院からカイムにある指令が下されたのは、つい昨日のことである。

 カイム(いくら急を要すると言っても、なぜ私が)

スキングラード付近の遺跡の調査。それがカイムに与えられた指令であった。
本来ならば現地のガードが行うはずの仕事だが、スキングラードでは街の警備に人手がほとんど回され人手不足が深刻であり、今まで手をつけていなかった。

だがこの度、とある本が見つかり、そこにはこの遺跡にアイレイドが残した装置が残っている可能性があるという事が記されていた。

今まで手付かずだった遺跡の中に、貴重なアイレイドの遺物が残されているかもしれない。
それは元より地に足が着いていない元老院を焦らせるのに十分な材料である。
無知な蛮族やモンスターの手によって壊されているのならまだしも、王を暗殺した赤ローブの者達の手に渡ってしまったら、国がひっくり返されてしまうかもしれないのだ。

元老院はそれを嫌い、スキングラードへの伝令を出す時間すら惜しみ、カイムにこの遺跡調査の指令を出したのである。

 カイム「連れて行けるガードもインペリアルシティとここスキングラードを合わせても1人ずつ、最近の人手不足も深刻だ」

先日の赤ローブの者達によるインペリアルシティ襲撃事件、オラグによって人的被害は防げたものの、
あの事件以後、各街ではガードが通常の1.5倍程度配備されている。そのため、慢性的な人手不足はさらに深刻化してしまっていた。

ついつい口をついた愚痴に気付き、ハッとするカイム。

そこへスキングラードのガード(長いので以下ス・ガードとします)がカイムを気遣って言った。

 ス・ガード「申し訳ありません。我々がもう少し人員を割くことが出来ればよかったのですが…」

 カイム「いや、気にしないで欲しい。
  遺跡で手に余るような危険があれば、引き返して報告すればいい。この人数では誰も我々を臆病と責める事はできんよ」

そこへ正義感の強そうなインペリアルガード(長いので以下イ・ガードとします)が割り込んだ。

 イ・ガード「しかし隊長、我々の向かう遺跡には重要なアイレイドの遺物があると聞きました。
  もし赤ローブの者達に先を越されでもしたら…」

ただでさえ赤ローブの者達の本拠地も分からず、戦いの主導権を握られているのだ。

 カイム(どのようなアイレイドの遺物があるのか知らされておらんが、これほど急いで私を送り込むところを見ると、
  本当にそれだけで状況が更に悪くなるような物かもしれんな)

カイムは眉間を指先で撫でながら目を細めた。これは彼が悩んでいるときに見せるクセのようなものである。

 ス・ガード「なら傭兵を雇いましょう」

 カイム「……戦士ギルドや魔術師ギルドは駄目だ。
  彼らはただでさえ我々を無能と馬鹿にしている、これ以上…」

 ス・ガード「ギルドとは無縁の者達に心当たりがあります。
  聞いた話では戦士ギルドや魔術師ギルドも彼らの世話になった事があるとか」

 カイム「なに?それは、何者だ?」

カイムが問うと、ス・ガードは壁に貼られた一枚の張り紙を指差した。

 ス・ガード「便利屋です」

 

 

 

天空の城の大きな門が重々しい音を響かせてゆっくりと開かれる。

開けられる扉からまず目に飛び込むのは、整然と立ち上る火柱。

その前には玉座が一つあり、そこには不気味な雰囲気を纏った何かが座っている。

 カイム(な、何者なんだ…?)

 イ・ガード(ま、魔王?!)

 ス・ガード(魔王なのか!?)

火柱の立ち上る城内部の異様さに当てられて、ガード達の妄想は加速する。

その者は玉座にどっしりと座り、方手はなぜか棍棒を杖のように支えている。
元老院や、暗殺される前の王にまで謁見した事のあるカイムでも、そのあまりある落ち着きには畏怖を感じた。

衣服は探検家のようであったが、何よりもその雰囲気を纏っているのは少女であるという事実が、カイムに只者では無いと錯覚させ、
赤い絨毯を進む足を重くし、声を緊張させた。

 カイム「し、失礼。
  貼り紙を見て来たのだが、ここは便利屋でよろしかったかな?」

カイムが声をかけると、少女は一瞬眉をピクリと寄せた。

 ス・ガード「ひぃ」

そして突然グワっと目を大きく見開き、カイム達を睨み付けた。

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