教会内部は今や生き残った人々の避難所となっていた。
普段なら、樽など置かれない場所に樽が並び、誰かが食べていたのであろう食料や食器が地面に置かれている。
参拝に来た人が座る長椅子も、あちこちに動かされているようだ。
しかし流石に信仰心の強いシロディールの民達であり、祭壇には一切余計な物は置かれていない。
布団も隅にたくさん配置されており、結構な人数が居た事を物語っている。
だが、見渡すかぎりこの布団の数に見合う人数は居ないようだった。
扉から入ったすぐそこで、マティウスと教会を守っていた女ガードが話をしていた。
マティウス「ご苦労だった。ここに居る者で全部か?」
ガード「はい。
他にもおりましたが、その者たちはここに止まるのを嫌がって外に・・・
彼らでは町の外へはたどり着けなかったでしょうね・・・」
マティウス「・・・だが、よくやってくれた!
外への道は確保した。君は彼らを連れて町の外へ行くんだ」
ガード「私も隊長達と共に戦います!」
マティウス「駄目だ。よく聞け、戦うだけがガードの仕事ではない。
彼らを安全な場所へ送り届ける事が、今は一番大事な仕事なのだ。
それに、戦いなど望まなくともせねばならんようになるだろう」
ガード「隊長・・・。
分かりました、必ずや無事に彼らを送り届けます!」
女ガードはマティウスに敬礼をしてから、教会の奥で不安そうにしている何人かの市民に声をかけ、彼らを連れて出口へと向かう。
そこへアルストが扉を勢いよく開け放ち飛び込み、両手を広げて叫んだ。
アルスト「全員無事か!?
この俺が来たからにはもう安心だ!
さぁ女達よ!怖かっただろう!俺の胸に飛び込んでくるがいい!」
両手を広げたアルストを避けるように生き残った人々は教会から去っていった。
アルスト「・・・・・」
サラ「・・・なんだか私まで恥ずかしいわ・・・」
手を広げたまま固まったアルストを無視し、呆れたサラはマティウスの所へ歩いて行き、話し始めた。
後ろでは、なぜだぁ、というアルストの叫びが聞こえる。
サラ「やったわね。・・・え〜と、」
マティウス「そういえば自己紹介がまだだったな、私はマティウス。
このKvatchガードの隊長を務めている」
サラ「私はサラよ。遅くなったけど、よろしくね」
マティウス「こちらこそ。
ところで、君に頼みがあるのだが・・・
分かっていると思うが、これで終わりと言うことではない。
この町を奴らの手から取り戻すには城を取り戻さなくてはならない。
そこで君の力を借りたいんだ。
我々だけではきっと城を取り戻す事はできんだろうからな・・・」
アルスト「条件による」
サラ「なんであんたがいきなり入ってくるのよ!」
アルスト「このサラは俺のにくどr」
ドコッっという音と共にアルストは床にめり込んだ。周囲のガード達が何事かと振り向く。
サラ「まだそんな事言うかあんたは!ちょっと黙ってて!
・・・あ、ごめんなさい。続けて」
マティウス「あ、あぁ・・・いや、つまり君の力を貸して欲しいのだ。
Kvatchを、取り戻すために」
サラ「もちろんよ。その為に私は来たんだから。
嫌だと言われても手伝うわ」
アルスト「ぐぅう・・・
し、仕方ないお前が行くんなら俺も行ってやろう」
サラ「別にもうついてこなくてもいいんだけど・・・」
マティウス「君は戻ってもらってもかまわんのだが・・・」
めり込んだ穴から這い上がりアルストは胸を張って言った。
アルスト「お前達は弱いからな、俺がついてないと話にならんだろう。
それに、俺の肉奴隷に何かあっては困るからな」
サラ「あーはいはい。そうね」
もはや何を言っても無駄だと思い、サラは投げやりに言った。