城を取り戻す事に決まった一行であったが、教会で戦いに備えて少し休憩をする事になった。
一休みするか、と椅子に座りあくびをしていたアルストにサラが話しかける。
サラ「ねぇ、アルスト」
アルスト「ん?なんだ?」
サラ「あんた戦えもしないのにどうやってオブリビオンゲートの最上階まで行ったの?」
アルスト「何を言う?
俺は最強だぞ?」
自身タップリに胸を張りながら言ったその言葉に呆れながらサラは言った。
サラ「はぁ・・・そう。
質問を変えるわ。何でオブリビオンゲートの中に入ったの?」
アルスト「ふむ。
この俺の・・・夢のためだ」
サラ「夢?
夢っていったい・・・」
サラが言い終わる直前、教会の扉が開き2〜3人のインペリアルガードが入ってきた。
それを見たアルストはサッっと身を屈めてサラの陰に隠れる。
サラ「ちょ・・・ど、どうしたの?」
アルスト「う、動くな・・・!
サラ、そのままじっとしていろ」
ガード「街道を巡回していたものです!
なにやらただ事ではないようですな、我々にも何か手伝える事はありますか?」
マティウスが事情を説明する。
するとインペリアルガード達は自分達も城の奪還に協力すると張り切って参加すると言った。
アルスト「サラ、ここじゃぁマズイ。
あの階段を下りたところへ・・・・」
アルストに促されてサラも階段下へと降りていく。
サラ「どうしたのよ突然、血相変えて」
アルスト「奴らは・・・俺を探しに来たのかもしれない」
サラ「え?!あんた何やったの!」
アルスト「馬鹿・・・!声がでかい!
説明してやるからでかい声を出すな。
・・・始まりは、この杖だった」
サラに向かって杖を見せると、神妙な顔つきで話し始めた。
アルスト「俺は壊れてしまった武器を売って、
新しい武器を買いにインペリアルシティの武器屋に行ったんだ」
サラ「え、えぇ・・・」
サラはアルストの真剣な顔を真に受け、話をまじめに聞き始めた。
アルスト「だが、所詮は壊れた武器を買った金・・・
まともな物が買えるほどじゃなかった。
そこで俺は、仕方なく見た目で選ぶ事にしたんだ。
店主にこう聞いた、『ちょっと装備してもいいか』と。
そしたら店主がコックリと頷いたんだ。
だから俺は装備した!」
話を進めるにつれ、真上にガード達が居るのを忘れアルストの話声のトーンが上がってゆく。
アルスト「ハハっ!そしたらどうだよ・・・
店主は・・・その店主はいきなり俺を泥棒だと騒ぎ出したんだ!
信じられるか?!俺は了解を得ていたんだぞ?!
きっと・・・いなか者をからかうつもりだったに違いない・・・
ガードに俺から罰金を巻き上げさせて、山分けにでもしようとしたんだろうな・・・
そこから先は・・・酷いモンだったぜ・・・?
罰金を断ったら問答無用で剣を突きつけられて・・・一日中追い回されて、必死で逃げて、気づいたらこのKvatchまで来てた・・・」
サラ「そんな・・・ヒドい!」
サラかなり騙されやすいようで、アルストの話を完全に信じ込んでしまった。
アルスト「奴らは俺を追ってきたのかもしれない!
俺は・・・奴らと争うつもりは全く無い!いつか無実を証明してやるつもりなんだ!
だから戦わずにここまで逃げてきたんだ!
頼む、奴らがなぜこの辺りをうろついていたのか、聞いてきてくれ・・・
奴らがもし俺を捕まえにきたんなら、俺は・・・」
サラ「分かったわ・・・そういう事なら私に任せて」
そういうとサラは階段を上がっていった。
アルスト(よし、流石俺の肉奴隷だ。物分りがいい。
これで奴らの目的が分かるはずだ。
もしも俺を追ってきたんなら、近くにカイム・アラゴナーが居るかもしれないからな。
俺は無敵だが、奴にだけは会いたくない・・・)
階段を上りきると、サラはそのままマティウスとインペリアルガードが話している輪の中に入っていった。
サラが近づいて行くとマティウスが気づき、「彼女のおかげで我々はここまで辿り着けた」などと言って紹介を始めだした。
マティウス「聞こえていたかもしれんが、彼らも我々を手伝ってくれるそうだ。
それに君が居てくれれば我々に怖いものなど無い!」
豪快に笑うマティウス。
彼は本当にこのKvatchの事を大切に思っているのだろう。
そしてインペリアルガードたちも命を投げ出す覚悟だ、とまで言っている。
彼らをだますような事はしたくない、そう思うサラであったが仕方が無いと覚悟を決めた。
マティウス「どうしたのだね?」
先ほどから黙りこくり、キョロキョロと自分達を見回しているサラにマティウスが声をかける。
サラ「え?え〜と・・・
じ、実は、えぇと実はガードの仕事に興味があって!
前からどんな事をしているのかなって聞いてみたかったの!
だ、だから・・・えぇっと・・・」
マティウス「それは素晴らしい!
君ほどの実力者であればどの町でガードに志願してもも歓迎されるぞ!」
サラ「え、え?別に入りたいわけじゃ・・・
ちょっとどういう事してるのかなって」
インペリアルガード「そんな事ならお安い御用だ。
我々でよければ何でも聞いてくれ」
サラ「じゃ、じゃあここに来る前何をしてたか聞いてもいい?」
インペリアルガード「ここに来る前?・・・あまり話したくはないが、君にならいいだろう。
1日前になるがインペリアルシティで窃盗事件が発生してな、その犯人をこの近辺まで追いかけてきたんだ。
逃げ足の速い奴で、我々はすぐに見失ったが、
アダムス・フィリダ隊長が後一歩というところまで追い詰めたのだ。
だが・・・
犯人の卑怯な罠にかかり気絶させられてしまい、取り逃がしてしまったらしい。
隊長を発見し話を聞き、この辺りを通りかかったときに、このKvatchから火の手が上がっているのを見つけ、駆けつけたというわけだ」
サラ「・・・・その犯人は放っておいてもいいの?」
インペリアルガード「もちろんいけない!
だがKvatchが最優先だ、このような事が放っておけるわけがない!
我々の仕事は・・・私の信じる正義は!市民の安全と秩序を守る事だ!
だが、まだまだ力の足りない私では、大事の前には小事を放っておかなければならない事もある・・・
しかしこのKvatchが解決したらきっと犯人を捕まえてみせる!」
マティウス「よく言った!そうだ!その通りだ!
その時には我々も協力するぞ!」
ガード達は「正義のため!」などと言って盛り上がっている。
その光景をサラは羨望のまなざしで見つめている。
サラ(この人は・・・いいえ、このガード達は正義のために働いているんだわ!
あぁあ・・カッコイイー・・・私もいつかそんな風に・・・)
サラは正義に憧れを抱いているのか、そんな事を思った。
そしてアルストは・・・
アルスト(マズイ、奴らはやはりカイムの手下だったか!
・・・どうする・・・このまま奴らの前に顔を出したら、間違いなくまたカイムと戦わなくてはならなくなる・・・)
何か使えるものは無いかと、アルストは周囲を探り、そして自分の道具袋を探った。
アルスト(!!!
これだ!!)
サラはガード達とそのまましばらく話し、少し休んでくると告げると、アルストの待つ階段下のドアの前へと歩いた。
するとそこには、謎の人物が立っていた。
ぽかーんと口を開けたまま突っ立っているサラに謎の人物が話しかけてきた。
アルスト「ふふふ・・・どうだサラ?誰か全くわからんだろう?
俺だ、アルストだ。
これなら奴らに顔がバレる事も無い」
変な仮面を付け自信満々のアルストを見つめたままサラは動かなかった。
どうしたのかと聞こうとすると、プイっと回れ右して階段を上りだす。
アルスト「お、おい?
なんだどうした?」
サラ「アルスト・・・あんたって、結構センスあるのね」
アルスト「は?センス?」
サラ「その衣装、なかなかだわ」
アルスト「衣装て、何言ってんだお前?」
そう言ってサラは床に敷いてある布団に潜り込んでしまった。
アルストは何がなんだか分からないと困惑したが、そのまま自然にサラと同じ布団に潜り込もうとし、
仮面を剣でぶん殴られて気絶した。