サラ「アルスト!いつまで寝てるの、もう出発するわよ!」

声に気づいてアルストは目を開ける。
周囲にはなにやら靄がかかっており、焦点が定まらず景色がだぶって見える。

 アルスト「ぐ・はおぉぉお・・・い、いてぇしなんだか目が回ってやがる・・・
  なんかお前にやられたような・・・?」

頭全体の痛みにもだえ、ひどい眩暈に耐えながらアルストは立ち上がる。

 サラ「まだ寝ぼけてるの?
  それにしても、こんな時によく泥のように眠ってられたわね」

仮面を付けた頭をふりながら、関心するわと歩いていくサラに先導されて扉に向かう。
教会の出口には既にマティウス達が待っていた。
アルストの姿に驚いてはいたが、防御力を上げるためだろうと思ったのかスルーし、
それぞれが「Kvatchのために!」と自らを奮い立たせながら扉を勢いよく開けて外へ飛び出した。

 アルスト(ふふふ、この変装のおかげで俺の顔が分からないようだな)

 

扉の先には、やはりDeadra達が待ち構えていた。
サラもガード達に続く、しかしアルストはまたも扉から出たところで腕組みして微動だにしない。

 サラ「戦いなさいよ!」

 アルスト「俺が出るまでもないだろ?
  自信を持て!お前達なら楽勝のはずだ!」

アルストの言葉を聞いたサラのコメカミに青筋が浮き上がり、剣に力がこもる。
サラの持つ大きな剣は、通常の両手剣のように重量を頼りに叩き切る事を想定して作られている。
しかしサラに倒されたDeadraの傷口、不意に当たってしまったであろう建物の残骸の傷には重量を利用した『破壊』の切り傷は無く、
鋭く引き裂かれたような、綺麗な切り傷だけがあった。

 アルスト(やはり、なかなかやりやがる。
  あんなでかい剣をどういう風に振ればああなるのか分からん。
  相当な大剣の使い手だ)

待ち構えていた敵に恐れず立ち向かう。

なるべく一対一になる状況は避け、複数で立ち回ろうとするが・・・

倒しても倒してもどこからかやってくる敵に苦戦させられる。

一体一体が間違いなく強敵であり、皆傷つき、疲れていた。

だがそんな事を言っていたらたちまち殺されてしまう。
生き延びるため、そしてKvatchを取り戻すため、彼らは戦い、そして・・・

犠牲を幾人か出しながらも勝利した。

 

 サラ「やった・・・!」

 マティウス「いやまだだ、それに厄介な事になった」

 サラ「厄介な事?」

 マティウス「城門に鍵がかけられている。城へ入れない。
  ゲートハウスに行って門を開けなければならないのだが、そこへ行くには北のガード詰所の道を通らなければならない。
  だが・・・そこの扉にも鍵がかけられていたはず・・・そうだ、教会へ戻って鍵を持っている者が居ないか聞いてきてくれないか?
  そしてゲートハウスへ向かい城門を開けてくれ。
  そうすれば我々は中へ突撃する事ができる」

 サラ「分かったわ、すぐに行ってくる!」

そう言ってサラが振り返ると、教会の近くからこちらへ向かってくるアルストが見えた。

(見えない・・・明らかに撮影ミスです。スイマセン)

 サラ(アイツなんで仮面脱いでるの!?しかも結局役に立ってないし!)

サラはアルストに事情を説明し教会へと2人で戻った。
やる気の全く無いアルストに一々説明して連れて行くのが彼女のいいところなのだろう。

 サラ「それと、仮面つけてなさいよ。バレちゃうわよ?」

 アルスト「うお!?暑かったから無意識のうちに脱いじまってた・・・」

 

教会へ戻ると、突然インペリアルガードが駆け寄ってきた。
アルストがまだ仮面をつけてなくてバレたのかとサラは振り向いたが、
すでに仮面をつけており、その場でサッと後ろに振り向いたアルストを見て胸を撫で下ろした。

彼らも巡回中に煙が上がっているのを見て駆けつけてきたらしい。
何か手伝える事は無いかと言ってきたのでサラが着いてきてと言ったらそれを快諾した。

 

残っていたKvatchガードに、詰所の鍵を持ってないかと尋ねると、そのガードが持っていると答えた。
近道があるらしく、そのガードが案内してくれるようだ。
どうやら教会の地下墓地を抜ける通路から向かえるらしい。

 

地下墓地に入る、そこにもやはりDeadraが居た。

 

地上へ出てからも連戦に次ぐ連戦である。
疲労でサラの動きが鈍くなると、流石のアルストも戦いに参加し始めた。
剣を振り終えた直後のサラへ襲い掛かるゴーレムへ棒を構えて突撃する。

 サラ「アルスト?!」

棒を胸の位置で両手で固定し突き出すように構え、走る勢いも利用してゴーレムの胸へとそのまま突き出した。
だが突如ゴーレムはバラバラになり、大粒小粒の無数の石になりアルストへ降りかかる。

 アルスト「うわあ!?」

間一髪のところで、サラがゴーレムの核を突き壊し、事なきを得た。
剣があればこんな奴らなんて・・・と、珍しくアルストは落ち込んでしまった。
なぜか申し訳ない気持ちになり、サラは言った。

 サラ「助けてくれるのは、その・・・嬉しいんだけど。
  魔法使いなら魔法で戦ったほうが・・・」

 アルスト「金が無くてな・・・・
  攻撃魔法はFlareしかないぞ・・・」

Flareとは最初から持っている攻撃用の魔法だ。当然威力は最弱である。

 サラ(接近戦もダメで、回復系しか魔法持ってなかったのね・・・
  だから戦おうとしなかったってこと・・・)

 アルスト「剣さえあれば楽勝なんだが、近頃すぐ折れるんだよな・・・」

 サラ「いいのよ、魔法使いは接近戦なんてしなくて。
  今までと同じように回復だけしてくれれば・・・」
  (剣がすぐ折れるなんて・・・尋常じゃなく扱いがヘタなのね・・・) 

ガード達がまた敵と戦い始めたので、2人も話をやめてそれに続いた。

戦いながら瓦礫に満ちた道を進み、ようやく物置のような部屋に辿り着く。
地下へと続く道の蓋はまるでマンホールであった。
それにかかっていた鍵を開けると、ガードはがんばれよと一言言って、もと来た道を戻っていった。

 

開けてもらった地下への道を降りる。降りた先の場所は、やはり破壊されていた。

石畳に石の壁、頑丈な部分は破壊されていないが、置いてあった木で作られた樽や箱が燃やされている。
何がそんなに憎いのか。
破壊できる物は破壊しつくす、Deadra達の無言のメッセージのようであった。

 

マティウス達は2人が城門を開けるのを待つ間、石造を見つめ、Kvatch奪還への思いを強めていた。

広場に立てられたこの像は英雄Antus Pinderの像である。

AntusPinderとは、過去に勝利の望みの無い戦いを指揮し、惜しくも敗北を喫するが、その勇気ある行動が認められ英雄と呼ばれるようになった男である。
この像を見るとこう思う、過去の英雄が蘇り、またしても勝利の望みの薄いこの戦いに参加し、我々に味方してくれているようだ、と。

 

燃える地下通路を通って、鉄のはしごを上ると、城門を開くための仕掛けについに辿り着いた。
しかもここはマティウス達が門が開かれるのを待っている場所と、城門を隔てた場所のようである。

 サラ「いい?開けるわよ?
  城門が開いたらすぐにマティウス達と合流して」

後ろを着いてきていたインペリアルガード達が頷いたのを見ると、サラは城門を開く仕掛けを動かした。

 マティウス「門が開いた!中庭を制圧するぞ!」

門が開くと同時に中庭へ突撃する。
ここにもやはり相当数の敵が居た。
しかし一休みしていたマティウス達の活躍で、簡単に中庭を制圧する事ができた。

 

そしてついに、城の前へと到着したのである。

いつの間にやら立ち直っていたアルストが先頭に立って城の門を睨み付けている。

 アルスト「よくやったぞお前達!
  ここで真打登場だ!!」

張り切って扉を開こうとするアルストを、サラが押さえつけた。

 

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