オブリビオンの軍は、いくら倒してもきりがなく、無尽蔵とも思える人員を橋へと送り込んでくる。
サラ「早くデイゴンを見つけなくちゃならないのに!
確かデイゴンが完全に復活するのは夕方よね?!」
剣を両手に構えたサラは、駆けて来る敵を見据えながら言った。
サラ父「うむ」
上空に浮かんでいたサラの父親が答える。
サラ父「力を取り戻したら取り戻したで、それもよかろう。
完全なるデイゴンを葬れば、我が力をやつらにも示す事ができる」
サラ「だめよそんなの!なんとかその前に・・・
あ、あれは!?」
サラは天を指差して驚きの声を上げている。
橋に殺到する敵に大きな影が射した。
その上を見上げると、何か巨大なものがゆっくりと降下してきている最中だった。
サラ父「・・・あれは・・・
完成していたのか・・・」
降下してくる巨大なものは、そのまま橋の上に着地した。
するとデイドラやドレモラが、我先にと橋を戻ってゆく。
サラ「何か知っているの!?」
サラ父「あれは・・・
我らが故郷デスランドで秘密裏に開発されていた、全天候型大破壊用ロボット『ダンボー』。
あれの機密性は高く、我ですらダンボーの装甲が『ダンボール』という未来物質で出来ているという他は何も知らされておらぬ」
サラ「!!
オブリビオンのデスランドにロボットの開発場が!?」
サラ父「うむ。
しかし、完成させていたとはな・・・博士め。
厄介なものを」
サラ「博士まで居たんだ!?」
ダンボーは、ズシンズシンと橋を揺らしながら2歩3歩と歩き、重そうに体を振るった。
サラ「こっちには秘密兵器は無いの?
このままじゃ、こっちが悪役みたいだわ!」
サラが言いたいのは、つまりこういう事だろう。
自分達は散々オブリビオン軍を蹴散らしてピンチにさせ、とうとうロボットまで呼ばれた。
秘密兵器のロボットというものは、普通はピンチになった正義の味方が最後の手段として呼ぶもの。
それに相対するのは、いつも悪役と決まっている筈だ。
と言いたいのだろう。
茂羅乃介「お嬢様、残念ながらこちらに秘密兵器はありません。
我々だけで倒すしかなさそうです」
サラ父「そういう事だ」
サラの父親はいっそう高く飛び上がり、こちらに歩み寄ろうとしていたダンボーに悪夢のような魔法を放った。
ダンボーの居た辺りは、完全に魔法の炎に包まれ、何も見えない状態だ。
しかし、そんな視線さえも焼き切る炎の中から、ダンボーは無傷で飛び出した。
そしてそのまま、サラ達に向かって突進する。
サラ父「クッ・・・!
防火ダンボールか・・・!!」
ダンボーが走るに合わせて、石で出来たこの巨大な橋が揺れる。
それだけでも橋は壊れてしまうのではないか、と思えるほどに揺れる。
サラ「こ、こんな大きいの・・・どうしたらいいの!?」
サラ父「いかん!サラ!」
地上に居たサラと3人のドレモラは、それでも武器を構えていたが、どうしてよいのか分からぬほどにダンボーは巨大だった。
そしてダンボーがサラ達に迫る。
ダンボーは走る勢いもそのままに、サラ達を踏みつけようとジャンプした。
そしてサラ達の真上に着地し、轟音が轟いて橋が大きく揺れた。
サラ達の居た場所にはダンボーの足が乗っている。
サラ父「おのれ許さん!」
サラの父親が怒りに駆られて叫んだ。
すると、今度は橋の代わりにダンボーがグラグラと揺れ、サラ達を踏み潰していた足をグググと持ち上げた。
サラ「な、なに!?」
ダンボーの足は、一人の大男が受け止めていた。
その大男は白銀の鎧に身を包み、赤く光る目をサラに向けて言った。
オラグ「待たせてすまんだす!」
♪ 忌まわしき過去を断て! ←FUSION WORLD様に著作権があり、無断転載、再配布は断じて禁止です。
右クリック→対象をファイルに保存を押して保存し、聴きましょう。
サラ「その声オラグなの!?」
巨大なロボット、ダンボーの踏み付けを一人で受け止めたのは、orogの真の力を獲得したオラグであった。
なぜオラグの正体はすぐに分かるのだろう。スパイダー・リンとかは正体がいつまで経ってもバレないのに。
そう疑問に思う読者も多いだろう。
だが今はそんな事を書いている場合ではない。
オラグの目が赤く光る。
血よりも、オブリビオンの空よりも赤く。
身に纏う白銀の鎧が歌う。
今こそ我らが戦うとき。人と平和に暮らすため、敵と平和に暮らすため。
体に流れる血は騒ぎ、本能のままにオラグが吼えた。
オラグの雄叫びがダンボーを貫通すると、その巨体は不自然に傾いた。
オラグが自分の何倍もあるダンボーを持ち上げたのだ。
そして彼はそのままダンボーを放り投げた。
ダンボーの巨体が風を撒いて大橋を飛んでゆく。
するとそこに、4体の影が舞った。
4体の影はダンボーに取り付き、空中を滑空するままダンボーに攻撃を加えた後、着地した。
サラ「あれはスパイダー・リン!・・・と、よく知らない3人のヒーローっぽい人たち!」
そう。4体の影は、今噂のシロディールヒーローズ。
スパイダー・リン、タランチュラ・テツヲ、ウルフマン、ウルフガールの4人だった。
シロディールが生んだヒーロー達も、ついにここに駆けつけたのだ。
ダンボーは橋の向こうにまで飛んで、大きな音を立てて地面にぶつかった。
オラグに投げられシロディールヒーローズに空中コンボを喰らっても、まだ壊れていないのかゆっくりと立ち上がろうとしている。
ダンボーが橋へと戻る前に、一時的に撤退していたドレモラやデイドラが橋へと侵入し、また橋が敵でごったがえした。
駆けつけたシロディールヒーローズも、一旦サラ達の下へと集まり、
戦闘態勢を取って敵を迎え撃つ準備を整えた。
そんな彼女らの横を、ユラユラ揺れる何かが通り過ぎて行った。
サラ「エールじゃない!ちょ・・・お酒臭・・・!」
エールはフラフラと千鳥足になりながらも前へと進む。
走っているわけでもないのに、そのスピードはサラが走るよりも早い。
そのままエールは一直線に敵の洪水に到達した。
サラ「エール待って!一人じゃダメよ!」
サラが叫ぶも、もはやその声は敵の奇声にかき消され、エールには届いていない。
エールは泥酔しすぎているのか、もはや手に何も武器を持っていなかった。
彼女は敵の真ん前に来て、やっとそれに気付いたのか、自分の道具袋を漁りだした。
そして徐に取り出したのは、アルコール度数130度の首都のナポレオン、『いいちこ』。
彼女は敵の洪水に飲み込まれそうになりながらも、『いいちこ』を瓶のまま呷った。
敵の洪水がエールを飲み込み、エールの姿が見えなくなる。
スパイダー・リン「エール!!逃げてー!」
スパイダー・リンが悲鳴を上げて、他の者にも緊張が走る。
そんな緊迫した場に、場違いなリズムの鼻歌が漂った。
オラグ「この歌はビリー・バンバンの!まさかまただすか!?」
オラグは知っていた。その歌を歌う者が誰なのかを。
そしてその歌が響くとき、何が起こるのかを知っていた。
エールを飲み込んだ敵の洪水は、一定距離を進むとその勢いを無くしていった。
洪水を形成する敵達が、バタバタと倒れてゆく。
そして洪水は、ただの水溜りのようになった。
その死体の水溜りの上には、エールが立っている。
エール「くぁwせdrftgyふじこlp;@〜〜〜!!」
エールが何かを言ったようであったが、酔い過ぎていてもはやその言葉は聞き取れるものではない。
そしてエールが立つその場所に、炎の魔法が放たれた。
放ったのはサラの父親、炎が消えると敵の死体は塵も残さず焼失し、エールだけが残された。
そしてアルストを除く便利屋と+αは集結し、
またしても迫ってくるオブリビオンの軍勢の切り札、『ダンボー』と対峙した。
サラ「行くわよみんな!」
茂羅乃介「はい。お嬢様」
スパイダー・リン「了解!」
オラグ「任せるだすよ!」
エール「あzsxfgvbhんjmk、l!」
ズシンズシンと地響きを轟かせ、巨大ロボットダンボーが迫る。
そしてそれに対峙する彼らは散開し、迫り来るダンボーへと挑んで行った。