♪ 凍てつく眼差し  ←これも使ってはいけませんよ?聴くだけならおk
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橋の上でダンボーが大暴れしているのを眺めていたデイゴンは、
自分の魂を入れたドレモラの体に力が漲ってくるのを感じてほくそえんだ。

 デイゴン「おお、漲る。懐かしき我が力が。
  奴らも朕の復活までよく耐えたものだ・・・が、全ては徒労。
  よく戦った褒美に、一撃で消し去ってやろう」

デイゴンは右手に意識を集中し、低く唸った。
甲高いキーンという耳鳴りのような音が響き、周囲の建物や植物が共鳴するように震えた。

その音は、聞こえるだけで破壊をもたらす恐るべき音。
建物の壁は音に共鳴するように小刻みに揺れ、ボロボロと崩れ落ちた。
木々は、まだ青々とした葉が全て散ると幹が崩れ、自身の重みに耐えかねたように根元が潰れ、ついには倒れた。

破壊の音を奏でるデイゴンの右手に、小さな光が灯った。

見ればデイゴン自身のドレモラの体にも、破壊の音による破壊がもたらされている。
肌の色が徐々に赤茶けていき、身に纏った黒いローブは何年も使いこまれた物のようにボロボロになっていた。

 デイゴン「この小石にも満たぬ小さなもの。
  これを解き放っただけで、あの都市程度ならば破壊に呑まれて消え去るだろう。
  朕の軍もろともな」

右手の光る物質を眺め、くっくっと陰湿な声で笑うデイゴン。
その光る物質こそ、破壊そのもの。

そして光る物質の乗った手をインペリアルシティへと向け、彼そのものの破壊を解き放った。

破壊はゆっくりとデイゴンの手を離れ、インペリアルシティへと飛んでゆく。

 

 

この破壊、光る物質こそ、反物質。
反物質は、通常の物質と衝突すると対消滅を起こし、その質量に相当するエネルギーを放出する。
そのエネルギーは凄まじく、計算上は人の拳ほども反物質があれば、地球とかいう星程度は壊滅してしまう程。

デイゴンが放った反物質はとても小さく、マジ力の膜に覆われているために安定しているが、
それが取り払われた瞬間にシロディールの地形が変わるほどのエネルギーを発するであろう。

インペリアルシティへと向かう破壊は、徐々にスピードを上げて一直線に飛んだ。

橋で戦う便利屋たちは、そうとも知らずにダンボーやオブリビオンの軍勢との戦いに必死だった。

デイゴンはきたる破壊を見据えて目を薄く開け、インペリアルシティを眺めている。

 

 

たったあれだけ。
小石よりも小さなあんなもので、全ては破壊されてしまう。

ガード達が守ろうとした人々、小さな正義感から立ち上がった囚人。

全てが無くなってしまう。

シロディールを守る正義のヒーローが居ても

タムリエル大陸一の戦士の血を持つorogが居ても

酒の勢いで強くなる者が居ても

人のために戦うドレモラが居ても

小石より小さい、あんなもの一つで全てが終わる。

破壊の化身デイゴン。
神とまで崇められる者が行う破壊は、やはり神の所業なのであろうか。

反物質がインペリアルシティの上空まで到達した。

デイゴンが、反物質を包んだマジ力を消し去る。
すると反物質は、物質と衝突して対消滅を起こし、エネルギーだけが取り残された。

後はエネルギーが放出され、シロディールの地形が変わるだけ。

 

 

 

 

 

 

♪音楽ストップ

それは刹那の筈だった。

反物質がエネルギーを放出し、シロディールに破壊が撒き散らされるのは、刹那の事の筈だった。
だが、その時はいつまで経ってもやってこない。

 デイゴン「なぜ破壊が起こらない」

マジ力の膜を取り払えばすぐにやって来る筈だ。と、デイゴンは反物質があった筈の場所に目を凝らした。

 デイゴン「なんだと?」

そこには何もなかった。
デイゴンが放った反物質と
空間が切り取られたように無くなっていた。

一瞬の後、思い出したかのように、切り取られた空間に向かって全ての空間が押し寄せるように流れ、
何事も無かったかのように全ては元に戻った。だが、そこには反物質は存在していない。

 

 

その現象が理解できぬデイゴンが驚きに目を剥くと、何者かが前からやってくるのが見えた。

その者は、骨だけの体で大きな剣を背負っていた。
その者は、まるでスケルトンのようだった。

 

 

だが彼はスケルトンではない。
その足は大地をしっかりと踏みしめて、真っ直ぐにデイゴンに向かって歩いている。
そして彼はデイゴンに喋りかけた。

大きな剣を背負い、喋るスケルトン。そんな存在はこの世にただ一人だけ。
そう、彼はアルストの師匠のスケレーd。

少し前に旅に出ると言って天空の城から姿を消した便利屋の一人。

 

 スケレーd「何をする気だったのか知らんが、これ以上はなにもさせん」

 デイゴン「常命の者にして骨だけの者?
  変わった者も居たものだな」

 

 

スケレーdの背に背負われた魔剣ストームプリンガーが、デイゴンを見てはしゃぎはじめた。

 ストームプリンガー「魂デケェ!!アイツマジでデイゴンじゃネーカ!
  おいデイゴン!お前の魂食わせロ!」

 デイゴン「二魔の魂喰い。まだ存在していたか。
  なるほど。空間を斬ったのは魔剣か」

 ストームプリンガー「俺にそんなこと出来る訳ねーダロ」

 デイゴン「何をとぼけるか。
  では貴様の持ち主の、骨だけの者が斬ったとでも言うか?
  一切のマジ力も感じられん、骨だけの者が」

 スケレーd「空を斬るのにマジ力など使う必要はない。
  ・・・デイゴン。すぐに軍を退け」

それだけ言って、スケレーdは魔剣を構えた。退かなければ力ずくでも、という事だろう。

その様を見たデイゴンから静かな殺気が放たれる。

 デイゴン「朕に命令とは、身の程知らずめが」

 ストームプリンガー「ギャッハハハハハハハハ!
  久しぶりのメシはデイゴンかヨ!やっちまえスケレーd!俺に魂を喰わせロ!」

 

 

場の空気を読まずにはしゃぐストームプリンガーとは対照的に、デイゴンとスケレーdは向かい合ったままピクリとも動かない。

目の前に居るのは恐怖の代名詞、デイゴン。1秒が永遠とも思えるほどの緊張。
そんな中に身を置いて、スケレーdは思案した。

 スケレーd(殺気の割に隙だらけで何もしてくる気配はない。
  ならば攻めるのみ)

それは魔神としての余裕なのか、スケレーdが感じるデイゴンは隙だらけだった。
だからこそ何かあるかも知れないと警戒し攻めあぐねていたのだが、こうなれば攻めるほかはないと、一息にデイゴンへと斬りかかった。

スケレーdが魔剣を振るう。ヒュンと空気が裂かれて鳴った。
そして、その剣はデイゴンをいともたやすく真っ二つに引き裂いた。

 ストームプリンガー「こ、コイツ・・・」

デイゴンは真っ二つに裂かれ、ドサリと崩れ落ちた。
しかしその目はまだスケレーdを睨みつけている。

そして真っ二つのデイゴンは、真っ二つのまま言った。

 デイゴン「なかなかのものだ。
  朕の力も見せてやろう。ありがたく思うがよい」

するとデイゴンの体が眩く光り、同時に衝撃波が放たれて、スケレーdは後方へと弾き飛ばされた。

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