便利屋の一行は首都中を練り歩き、歴史的な建物や美術品として高い価値のある石像を見て回った。

首都の人々は、体の大きなオラグや、ドレモラ丸出しの茂羅乃介に驚いたが、
オラグをorogと気付く者は少なく、茂羅乃介が誰かに危害を加えるような事も無かったので、特に大きな騒ぎにはならなかった。

だが、便利屋一行をハラハラしながら眺めている者達も確かに居た。
それはここインペリアルシティのガードたちだ。

彼らは便利屋の一行を危険人物と決めてかかっており、以前アルストとオラグが来た時のように、
インペリアルシティガード総出で便利屋一行の行動を監視していたのだった。

以前カイム(アダムス・フィリダ)がやった、ガード達を指揮する役割を任されたオーデンスは、
物陰に隠れながら今後の対応について考えていた。

 オーデンス(ぐぬううう・・・奴らめ、インペリアルシティの目ぼしい建造物をくまなく下見し、様々な商店に立ち寄って何を企む!?
  ・・・あのパーティー編制だ。まさか観光というわけではあるまい。
  とすればまさか!・・・いや、いくらなんでもそれは・・・!
  だが、だがもし本当に奴らが、このインペリアルシティ占拠を企んでいるとしたら!?)

便利屋の企みとはまさに観光であったが、そんな事とは露も知らぬオーデンスは彼らの行動の意味が推し量れず頭を悩ませた。

命令の降りてこないガード達は、何をして良いやら分からなくなり、不安になって小声で問いかけた。

 ガード1「オーデンス隊長、我々はどうすれば・・・
  アダムス・フィリダ隊長がやったように、市民全員を強制避難させますか?」

 オーデンス「ならん。
  それは市民達を無実の罪でスタップする荒業だ。
  以前に強制避難をさせ、満足な説明もしなかったせいで、市民達の我々への不満は拭い難いものとなってしまった。
  また同じような事を繰り返せば、市民のガードへの不満は頂点に達するだろう」

なぜガードは市民へ説明が出来ないのか、
それは鉄拳のサラが来た、などという説明をすれば市民は動揺し、パニックが起きてしまう可能性があるからだ。

インペリアルシティの民は、サラが空に浮かぶ星を割ったという事を知っており、
その折には、実際に3日間もこの首都から人けが無くなってしまう、という現象が起きていた。

しかしサラの顔を知っているのは一部のインペリアルガードのみで、サラが「鉄拳のサラ」だと気付かなければ、
民がパニックを起こす事などはない。

 オーデンス「とにかく今は様子を伺う他に手はない」

 ガード1「承知しました。では」

ガード1がその場を離れようとすると、オーデンスは何かを思い出したように言った。

 オーデンス「待て。・・・以前、オーガの大群が現れ、皇帝を暗殺した赤ローブの1人が目撃されたのは、
  鉄拳のサラの手下がこの街に来たときだったな?」

 ガード1「そうです。オーデンス隊長は参加していなかったのですか?」

 オーデンス「私はその時、シェイディンハルへ出張していてな。
  だが・・・そうか。
  鉄拳のサラ達を監視するのは15名に留める。他は全て街全体の警備へ回せ」

オーデンスから命令を受けたガード1は、背筋を伸ばして敬礼をし、命令を伝えるために走り去った。

 オーデンス「赤ローブと鉄拳のサラ・・・か。
  ただの偶然だったのかもしれんが、油断はできん」

 

 

 

一方の便利屋一行は、昼食を済ませ、そのデザートに今回の旅の大きな目的であったアイスを味わった。

 サラ「ビックリのおいしさだったわね。本当に冷たくて甘い食べ物があるなんて」

 エール「私作り方聞いちゃった!牛乳と糖蜜を入れてるんだって。
  セールじゃなかったらきっと凄く高かったと思うよ〜」

糖蜜というのは砂糖を水に溶かしたようなものだ。このような時代背景・地域では、かなり高価である。

 

みんなと楽しく食事をしていたリンであったが、その顔は青ざめ、先ほどまでの笑顔が嘘のように落ち込んでいるようだった。

 リン(また、思い出しちゃった・・・)

今の楽しい時間はあの時と似ていて、リンに過去のことを思い出させた。

それは本当に少し前、まだ鮮明に思い出せるほどの、つい先日のこと。
その時もリンは楽しく外食をした。テツヲと。

楽しかった。少し誇らしくもあった。
そしてなにより、ゆったりと流れる2人の時間が幸せだった。

それは本当に少し前のこと。

でもそれは、もう2度と味わう事の出来ない時間。
でもそれは、無くなったのが嘘なんじゃないかとも思える、少し前のこと。
でもそれは、本当に取り戻せない愛しい記憶。

こうして家族とも言える、便利屋の仲間たちと過ごす時間も幸せだけれど、失われたモノはもっと愛しく思えてしまう。

そんな時、リンはいつも自分を責めた。

なぜ私は動かなかったのか。崖から落ちゆく彼の手を握り、助けてやれなかったのか。
ただ見ていただけ。あんなに高い所から落ちるテツヲ君を。
正義の味方なんて名乗っていたくせに。

そんな風に怒りが込み上げ、子供のように泣きじゃくりたくなっても、
すぐに悲しみが湧き上がって怒りに勝り、どうしようもなくなり、動けなくなってしまった。

 

 

エールはそんなリンに気付いて声をかけた。

 エール「リン?顔が真っ青だよ・・・大丈夫?」

 リン「うん・・・大丈夫。少し休めば治るから。
  ・・・ごめんなさい。私、先に宿に戻ります」

弱弱しく行って、リンは歩き出した。

 サラ「待って、戻るなら私もついて行くから」

 リン「いいんです。・・・ごめんなさい。
  1人に、なりたいんです」

 

 

 

 

リンは1人で宿へと帰って行った。

 オラグ「1人で行かせてよかったんだすか?」

皆が一様にリンの去った方向を不安げな表情で眺めていると、オラグが言った。

 サラ「うん・・・でも、リンは何も話してくれないし、無理について行っても嫌がるだろうし・・・」

何も言う事が見つからず、一行はそのまま無言でリンの去った方向を眺め続けていた。

 

 

すると、一行が眺めるその道を、見覚えのある人物が妙な2人組みと一緒に通りかかった。

 サラ「ええ!?なんでこんなところに!」

その人物は、真っ白な鎧のようなものを全身に纏い長刀を背に背負った、サラの父親であった。

 

サラの父親は、ドレモラの2人組みと3人でインペリアルシティを眺め回す様に歩き、便利屋の一行の前に立ちはだかった。
そしてそのまま知らん顔をして一行の前を通り過ぎようとしたので、たまらずサラが叫んだ。

 サラ「ちょっと待ちなさい!
  何してるのよ!こんなところで!」

サラに怒鳴られると、ドレモラ2人組みのうち鎧を着た大きい方が言った。

 ドレモラ(大)「下がれ。……む?」

ドレモラ(大)はサラの背後の茂羅乃介を見つけて首をひねった。

 

サラは、そっぽを向いたままの父親に向かって怒鳴った。

 サラ「聞いてるのクソオヤジ!」

そこでようやくサラの父親が振り向いた。

 サラ父「余興のようなものだ」

 ドレモラ(大)「余興?
  …余計な事は言うな。ヴァルキナズに上がったばかりの新米が」

サラの父親が返答すると、ドレモラ(大)がそれを制した。

また何かを言おうとしたサラであったが、背後から茂羅乃介が止めに入り、緊張した面持ちでサラに耳打ちをした。

 茂羅乃介「お嬢様、あの大きなドレモラはヴァルキナズのセィフューク様です。
  セィフューク様はお館様と違い、激しいお方だと聞きます。あまり刺激されない方がよろしいでしょう。
  そしてあの小さな…」

 セィフューク「そこのドレモラ、貴様はなぜここに居る」

ドレモラ(大)=セイフュークは茂羅乃介を睨み付けて言った。

 

 サラ父「我の配下のものだ。余計な事はしない方が身の為だぞセィフューク」

 セィフューク「身の為だと!?新米が誰を前にして言うか!
  貴様、まさかワシの命まで狙っておるのではあるまいな?
  ワシ以外のヴァルキナズを皆殺しに出来ても、ワシは同じようにはいかぬぞ!」

サラの父親が高圧的な態度を取ると、セィフュークは烈火の如くまくし立てた。

大声で怒鳴るセィフュークに、ローブを着た小さいほうのドレモラが言った。

 ドレモラ(小)「五月蝿い」

その声は高く子供のような声で、聞き取れるかどうか程度の小さな声であったが、
セィフュークは驚きに飛び跳ねた。

 セィフューク「失礼いたしました。メエルーン・デイゴン」

メエルーンズ・デイゴン。その名を聞いて、今度は便利屋一行が飛び上がった。

 

メエルーンズ・デイゴン。

それは16人居るデイドラ王の1人であり、いわゆる魔神である。
デイゴンは破壊や災害を司り、目に映るもの映らないもの全てを破壊する、破壊の権化。
オブリビオンの、サラの住んでいた領域、ドレモラの故郷デッドランドの所有者でもある。

 

 エール「え〜!?デイゴンって子供だったの!?」

エールは驚きのあまり、思ったままの感想を口に出した。
それもそのはず、デイゴンはローブを纏い子供のように小さな体型だったのだから。

しかしデイゴンはエールを気に留めてもいない様子で、サラを見て、サラの父親に向かって言った。

 デイゴン「アレは貴様の子か?妙な形をしておると思ったわ。
  
子を、成すとはな。
  ドレモラは1体で完全。子を成すなど不完全の証よ。
  それも朕の近衛士団のヴァルキナズが、か。
  もう貴様はいらぬ。
  朕がこの場で破壊してくれよう」

デイゴンはゆっくりとそう言って、有無を言わさずサラの父親に破壊の魔法を放った。

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